浮遊性有孔虫の骨格の化学が示す環境シグナル  [in Japanese] Environmental signals recorded in skeletal chemistry of planktonic foraminifers  [in Japanese]

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Author(s)

    • 木元 克典 KIMOTO KATSUNORI
    • 独立行政法人海洋研究開発機構 地球環境変動領域 Research Institute for Global Change (RIGC), Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology (JAMSTEC)

Abstract

現在,人類活動による大気中の二酸化炭素濃度の増加により,海洋表層の酸性化が懸念されている。 実際に北極海域では翼足類がつくる炭酸塩のアラゴナイトの飽和度がすでに化学的な安定領域を下回っていること(Yamamoto-Kawai et al.2009)や,また南大洋では現生浮遊性有孔虫の骨格の重量が軽くなっていることが指摘されており(Moy et al. 2009),石灰質骨格をもつプランクトンへの生態的打撃が懸念されている。一方で地質学的な時間のスケールで見ると,100万年前以降の太平洋における炭酸塩補償深度(CCD,炭酸塩が完全に溶解する水深)は,それぞれの氷期の時代により浅い水深へ上昇しており,またこの変動は約10万年周期をもって振動していることが明らかとなっている(Farrell&Preil 1989) 。これは海洋の炭酸系が地質時代を通して周期的に変動してきたことを物語っており,海洋の酸性化の歴史であるとも言える。これからの地球環境の急激な変化を知るうえで,過去の地球環境の歴史を知ることが必要なのはもはや明白である. これまで述べてきたように,有孔虫のCaCO3の骨絡中にはさまざまな元素や同位体が含まれており,それぞれの化学種を分析することによって,過去の海洋環境(物理・化学的情報)についての情報を直接・間接的に得ることが可能である。ここにあげた以外にも主要元素や微量・希土類元素などについて過去の海洋環境のプロキシーとなる核種が報告され,多くの研究者によって日々,検証作業がなされている。しかし,有孔虫の代謝に伴う同位体分別効果や,炭酸塩形成の際の微量元素の取り込み機構等の基礎的な事象については見解明なことが多い。現生の浮遊性有孔虫の生態研究と,環境制御下での飼育実験,そしてそれらが生息している現在の海祥の物想・化学観測を同時に実施し,比較をすることによって因果関係が明らかとなり,パレオプロキシーというツールの精度を向上させることができる。地味環境システムのさらなる理解,そして将来の地球環境予測に貢献するために,現在の観測に従事する者と古環境研究に従事する者が協力し合い,ともに邁進する努力が今こそ必要である。

Journal

  • Bulletin of the Plankton Society of Japan

    Bulletin of the Plankton Society of Japan 58(1), 65-73, 2011-02-26

    日本プランクトン学会

References:  66

Codes

  • NII Article ID (NAID)
    10027957288
  • NII NACSIS-CAT ID (NCID)
    AN00197015
  • Text Lang
    JPN
  • Article Type
    REV
  • ISSN
    03878961
  • NDL Article ID
    11035323
  • NDL Source Classification
    ZR1(科学技術--生物学)
  • NDL Call No.
    Z18-1045
  • Data Source
    CJP  NDL  JASI 
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