周産期救急医療に対するドクターヘリ搬送の有効性

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  • Effectiveness of the helicopter transportation system in emergency perinatal treatment

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抄録

目的:近年,周産期救急医療が社会問題となっている。そこで当院のドクターヘリ搬送を行った母体・新生児を調査し,ドクターヘリが周産期医療に有効であるかを検討した。対象と方法:2004年から2009年までにドクターヘリで搬送した母体41例,新生児43例について,原因疾患,要請地域,平均移動速度,救急車と比較した搬送の予測短縮時間,搬送中のバイタルサインの変化・酸素投与,入院後経過,転帰を検討した。救急車搬送症例は,当院に搬送された母体・新生児搬送症例83例について検討し,搬送距離と時間から回帰直線,回帰方程式を求め,ヘリ搬送と比較した。統計学的有意水準は5%とした。結果:母体は妊産婦39例(95.1%)で切迫早産が34例(82.9%),新生児は先天性疾患が21例(48.8%)であり,50km以遠からの搬送が多かった。ドクターヘリの平均移動速度は171.1km/hrであり,救急車と比べ,50km離れた地域で約61分の短縮が可能であった。搬送中に母体の心拍数,平均血圧は変化しなかったが,SpO2は低下した(p<0.05)。新生児搬送も同様に心拍数は変化せず,SpO2が低下していた(p<0.05)。ヘリ搬送中の酸素投与開始は母体1例(2.4%),新生児6例(14.0%)であった。転帰は出産33例(80.5%)で,そのうち帝王切開15例(36.6%)であった。出生児は双児を含む33例で,超低出生児14例(42.4%)であった。新生児は全例新生児特定集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit: NICU)に収容となり,手術例は19例(44.2%)であった。軽快退院は29例(67.4%),転院7例(16.3%),死亡は6例(13.9%)であった。考察:救急車に比べ,ドクターヘリは,搬送時間が短縮できる。また,搬送中にSpO2の低下を認めたが,適切な酸素投与にて循環動態は安定していたと考えられた。結語:ドクターヘリは重篤な母体・新生児を県内・県外の遠距離から短時間かつ安全に搬送し,適切な治療を速やかに行うことができるため,周産期医療に有効である。

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