北東部タンザニア, 北パレ山塊西麓の乾季灌漑作と水道事業 [in Japanese] Dry Season Irrigation Farming and Water Supply Project at the Western Foot of North Pare Mountains, Northeastern Tanzania [in Japanese]
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タンザニアにおいては、国際的な開発思潮に同調して、1986年に構造調整政策が、2000年に貧困削減政策が導入された。このような国家レベルでの開発政策の変遷に農村社会・世帯がいかに主体的に対応したのかについての実証研究の成果はいまだ少ない。本報告では、北東部タンザニアに位置する北パレ山塊の西麓の1集落の水資源利用にかかわる事例について紹介したい。当該集落の周辺の耕地では在来灌漑施設を利用した乾季のインゲンマメ作が1990年頃に開始された。この乾季灌漑作の実践は集落外の住民にも開放されており、また用水管理の原則は柔軟に運用されていた。2000年以降に乾季灌漑作は低調となるが、その原因は(1)十分な用水を確保できないことと、(2)隣接する地方都市の人口増加に伴う有利な現金稼得機会の出現にある。水資源利用に関しては、調査地では2003年以降に水道新設事業が開始された。水利権の確保や資材購入のための資金確保に難航したが、2008年に新施設が利用できるようになった。調査地での乾季灌漑作と新規水道事業は、地域社会が主体性を発揮した事例といえよう。地域社会・住民の能力の限界ももちろんあるが、彼らが外部からの働きかけを待たずに自ら変化を主導したことを評価すべきであろう。ただし、彼らの選択は周辺環境に負荷を与えている可能性があることにも、配慮すべきである。
Journal
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- Journal of agricultural development studies
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Journal of agricultural development studies 21(2), 9-15, 2010-12-31
日本国際地域開発学会