我が国の気候変動政策における意思決定プロセスへの市民関与の発展

書誌事項

タイトル別名
  • The Development of Public Involvement in Decision Making Process of Climate Change Policy of Japan
  • ワガクニ ノ キコウ ヘンドウ セイサク ニ オケル イシ ケッテイ プロセス エ ノ シミン カンヨ ノ ハッテン

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抄録

技術革新や経済社会構造の変革のみならず,人の価値観・意識変革・行動変革をも必要とされる気候変動問題に関する政策を実効あるものとするためには,その意思決定等への市民の関与に対する期待が大である。我が国においては,京都議定書交渉への対応のための国内政策からポスト京都議定書対応に向けた国内政策に至るまで,この10年間余りに,国家レベルでの気候問題の政策形成への市民参加としては,行政府が市民関与の場を設定(行政アプローチ)するパブリック・コメント等の関与手法が用いられてきた。しかしながら,有効な民意の形成,及びその政策決定への反映といった観点からは,これらの手法が充分機能しているとは言い難い。これまで,気候政策に関して適用されてきた意見公募や世論調査等においては,民意を掬取する手法としての系統的な情報整理や,調査された実態に基づく有効な議論の展開が為されてこなかったのではないか。<BR>そこで本稿では,気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)における日本の対応方針の意思決定からCOP15 のポスト京都議定書の温暖化ガス削減目標の日本案意思決定までの複数の気候政策事例を取り上げ,それらの政策意思決定における市民関与の形態や機会数,関与レベル等に注目し,関与手法の系統的評価の基礎となる情報を収集した。さらにこれらの事例における関与の実態を時系列で整理した上で,市民関与のレベル評価と傾向分析を行ない,我が国における気候政策決定への有効な市民関与の実現に向けての課題を考察した。なお,関与レベルについては,市民関与の類型として定着しているアーンスタインの8階梯モデル,原科の5段階モデル,佐藤らのエレベータ・モデル等を用い,関与の強さや応答の双方向性に関する評価に焦点を当てた。その結果に基づけば,パブリック・コメント等で収集された市民意見の情報処理,民意把握の点での課題が残されているものの,総体として,我が国の気候変動政策への行政アプローチによる市民関与は,緩やかではあるが発展の傾向にあることも観察された。

収録刊行物

  • 環境科学会誌

    環境科学会誌 24 (5), 422-439, 2011

    社団法人 環境科学会

参考文献 (43)*注記

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