小学校高学年における首尾一貫感覚(Sense of Coherence; SOC)の変化およびソーシャルサポートとの因果関係 1年間の縦断調査から

  • 朴峠 周子
    筑波大学大学院 人間総合科学研究科 ヒューマン・ケア科学専攻
  • 武田 文
    筑波大学大学院 人間総合科学研究科 ヒューマン・ケア科学専攻
  • 戸ヶ里 泰典
    放送大学 教養学部 生活と福祉コース
  • 山崎 喜比古
    財団法人パブリックヘルスリサーチセンター附属ストレス科学研究所
  • 木田 春代
    筑波大学大学院 人間総合科学研究科 ヒューマン・ケア科学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • Change in Sense of Coherence (SOC)and causal relationships with social support among upper-grade elementary school children A one-year longitudinal survey
  • ショウガッコウ コウガクネン ニ オケル シュビ イッカン カンカク(Sense of Coherence : SOC)ノ ヘンカ オヨビ ソーシャルサポート ト ノ インガ カンケイ : 1ネンカン ノ ジュウダン チョウサ カラ

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抄録

目的 本研究では,小学校高学年における首尾一貫感覚(SOC)とソーシャルサポートの 1 年間の変化,および両者の因果関係を明らかにする。<br/>方法 神奈川県内近郊の公立 A 小学校に通う 4~6 年生全児童403人を対象とし,属性,SOC,ソーシャルサポートに関する自記式調査票を用い 1 年間の縦断調査を実施した。各学期(全 3 回)の調査への回答が完全であった237人について,潜在成長曲線分析を行った。まず,SOC 得点とソーシャルサポート得点それぞれについて,各学期の得点を観測変数,1 学期の得点を表す[切片]と 1 年間の得点の変化を表す[傾き]を潜在変数,学年と性別を予測変数とするモデルを作成し,集団全体の変化と変化の個人差を観察した。次に,両得点のモデルを組み合わせ双方向の因果関係を検討した。<br/>結果 SOC 得点は,その[傾き]の平均値が0.01(n.s.),分散が2.87(P<.05)であったことから,集団全体では 1 年間変化せず,個人レベルでは徐々に高くなる児童と低くなる児童いずれもいることが観察された。ソーシャルサポート得点は,その[傾き]の平均値が−1.25(P<.05),分散が8.47(P<.01)であったことから,集団全体では 1 年間で低下し,個人レベルでは徐々に高くなる児童と低くなる児童いずれもいることが観察された。各得点の変化に学年と性別の有意な関連はみられなかった。続いて,ソーシャルサポート得点の[切片]から SOC 得点の[傾き]に対して0.44(P<.001)の,SOC 得点の[切片]からソーシャルサポート得点の[傾き]に対して0.34(P<.05)のパス係数がそれぞれ認められた。よって,1 学期のソーシャルサポート得点が高いほど 2 学期さらに 3 学期の SOC 得点が高くなること,また 1 学期の SOC 得点が高いほど 2 学期さらに 3 学期のソーシャルサポート得点が高くなることが明らかになった。これらの関係性に学年と性別の有意な関連はみられなかった。<br/>結論 237人の小学校高学年集団では,1 年間で全体の SOC は変化せずソーシャルサポートは減少した。また,1学期にソーシャルサポートを豊富に受けている者はその後の SOC が高くなること,1 学期に SOC が高い者はその後のソーシャルサポートが豊かになることが明らかになった。即ち,潜在成長曲線分析によって SOC とソーシャルサポートが双方向の因果関係をもつことが示唆された。

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参考文献 (32)*注記

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