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- 木村 英雄
- 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所 神経薬理研究部
書誌事項
- タイトル別名
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- Hydrogen sulfide: production, release, and functions
- リュウカ スイソ : ナマ ゴウセイ,ホウシュツ,セイリ キノウ
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抄録
卵の腐敗臭を放つ毒ガスとして知られている硫化水素(H2S)が,生体内で作られることが日本でもようやく知られるようになってきた.Cystathionine β-synthase(CBS),cystathionine γ-lyase(CSE),3-mercaptopyruvate surfurtransferase(3MST)の3つの酵素が脳,肝臓,腎臓,血管,膵島などでH2Sを生産する.そして,神経伝達調節,平滑筋弛緩,細胞保護作用,インスリン分泌調節,抗炎症,血管新生など,H2Sは多様な作用を示す.このうち,細胞保護作用は神経細胞を酸化ストレスから保護する働きを皮切りに,心筋を虚血再還流障害から保護することが見つかり,アメリカではH2Sを冠状動脈バイパス手術に適用する第II相効果試験に入るなど,臨床応用への動きが目覚ましい.H2Sがmonoamine oxidase(MAO)を抑制する作用やミクログリアからのサイトカイン放出を抑制する作用を利用し,レボドパ(L-dopa)にH2Sをゆっくりと放出する構造をもつ化合物が開発され,パーキンソン病モデル動物ではL-dopaより優れた結果が出ている.さらに,H2Sが非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)による消化管の炎症を抑えることから,新薬の開発が進んでいる.基礎研究においても今年に入ってから,すでに5つのグループからそれぞれ特色の異なったH2S蛍光プローブが報告されている.これによって,H2Sがどのような時に,いかなる刺激によって放出され,消失していくかをリアルタイムで追跡できることが期待される.
収録刊行物
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- 日本薬理学雑誌
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日本薬理学雑誌 139 (1), 6-8, 2012
公益社団法人 日本薬理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001204275415296
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- NII論文ID
- 10030455931
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- NII書誌ID
- AN00198335
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- ISSN
- 13478397
- 00155691
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- NDL書誌ID
- 023419685
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDL
- Crossref
- CiNii Articles
- KAKEN
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可