大量下血で発症した一次性大動脈腸管瘻の1例

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タイトル別名
  • A Case of Primary Aortoenteric Fistula with Massive Melena

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抄録

【目的】大動脈腸管瘻で一次性大動脈腸管瘻はまれな病態である.大量下血で発症した炎症性腹部大動脈瘤による一次性大動脈腸管瘻を経験したので報告する.【症例】症例は65歳,男性.2カ月前より腹部膨満感出現し下剤内服.2009年8月中旬,突然大量に下血(黒色便)し,意識朦朧となり救急要請.救急車内にて一時血圧60 mmHgとなる出血性ショックの状態で緊急入院となった.消化管出血を疑い上部消化管内視鏡検査を施行.Vater乳頭対側に拍動とoozingを伴う巨大な露出血管あり.クリッピング施行.手技中,噴出性出血も出現したが一応止血された.しかし,その後も持続性の出血を疑われ塞栓術目的に血管造影施行したところ巨大な腹部大動脈瘤を認めたため造影CT施行し,大動脈腸管瘻と診断.緊急手術となる.開腹すると十二指腸と大動脈の間に交通を有する大動脈腸管瘻を確認し周囲組織の性状から感染が明白でないことから,十二指腸と大動脈瘤壁を一塊として切除し,十二指腸を再吻合した.大動脈は人工血管を用いて解剖学的再建を行い,さらに同部への大網充填術を施行した.術後Vater乳頭部浮腫による閉塞性黄疸を併発したが絶食,高カロリー輸液にて軽快した.他は感染兆候もなく経過は良好で術後36日目に退院となった.術後18カ月の現在良好な経過である.【結論】炎症性腹部大動脈瘤が原因と考えられる一次性大動脈腸管瘻というきわめてまれな1救命例を経験した.大動脈腸管瘻は大量出血の可能性があるため血行動態が安定している早期に手術に踏み切ることが大切である.

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