アブラナ科植物における分子遺伝学の変遷  [in Japanese] Recent progress of molecular genetics in Brassicaceae  [in Japanese]

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アブラナ科には,モデル植物であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)をはじめ,様々な農業作物種が属している。その中でもBrassica属には,細胞遺伝学的に明らかにされた「禹の三角形(U1935)」と呼ばれるABCゲノムモデルにより説明される種間のゲノム関係がある。2倍体種Brassicarapa(ハクサイ,n=10),B. nigra(クロガラシ,n=8),B. oleracea(キャベツ,n=9)をそれぞれA,B,Cゲノム種とすると,B. juncea(カラシナ,n=18),B. napus(ナタネ,n=19),B. carinata(アピシニアガラシ,n=17)はそれぞれAB,AC,BCゲノム種と表される。つまり,3つの2倍体種を基本に,各種間での自然交雑によってそれぞれのゲノムが融合した3つの複2倍体種が形成されたことを意味している。それぞれの種は,形態的に非常にバラエティーに富んでいるが,RFLPやRAPD,オルガネラゲノムを用いた系統解析により上記系統関係は支持されている(Songet al. 1988)。B. rapaは,アブラナ科アブラナ属に属し,地中海地方が起源とされている(Li1981)。自然交雑により様々な形態的特徴を有する亜種に分化し,ハクサイやカブ,コマツナ,パクチョイなど数多くの野菜類へと受け継がれている。特にハクサイは,東アジア全般における重要な野菜で,カブとパクチョイの自然交雑により生じ,10世紀頃にはすでに在来品種の栽培が開始されていた(Li1981)。約600年前から様々な形質の改良が始まり,日本へは1866年に中国から導入されたと言われている。その後も品種改良が盛んに行われ,一代雑種(F1)品種が数多く作出されている。現在の育種目標は,病虫害抵抗性・品質・形態・栽培適応性など多岐に渡っているが,明治・大正期に育成された4つの固定品種群(愛知郡・チーフ群・加賀群・捲心群)が基本となっている。Brassica属種のゲノムは,進化の過程で3重複によりゲノムが巨大化したと考えられているが,2倍体種においては500Mb程度と植物においては比較的小さなゲノムサイズである(The Brassica rapa Genome Sequencing Project Consortium 2011)。シロイヌナズナとBrassica属は1450~2040万年前に共通祖先種から分化したとされ,これら近縁種間には共通祖先種由来のゲノム領域が存在している(Yang et al. 1999)。そのため,アブラナ科・アブラナ属種間におけるゲノム比較研究は,育種学や遺伝学だけでなく,系統分類学・進化学など種の分化機構やゲノム進化を考える上でも興味深い研究対象である。本稿では,アブラナ科植物における分子遺伝学研究のここ10年の進歩について,筆者が2000年から開始した遺伝解析ツールの開発と農業形質の遺伝解析から得られた結果を中心に紹介する。

Journal

  • 育種学研究 = Breeding research

    育種学研究 = Breeding research 14(4), 114-120, 2012-12-01

    日本育種学会

References:  36

Codes

  • NII Article ID (NAID)
    10031131510
  • NII NACSIS-CAT ID (NCID)
    AA11317194
  • Text Lang
    JPN
  • Article Type
    REV
  • ISSN
    13447629
  • NDL Article ID
    024180811
  • NDL Call No.
    Z74-B467
  • Data Source
    CJP  NDL  JASI 
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