『遺伝性難聴への内耳細胞治療法開発』 幹細胞ホーミング機構を応用した遺伝性難聴に対する内耳細胞治療法の開発

書誌事項

タイトル別名
  • Cell therapy for hereditary hearing loss with stem cell homing factors
  • イデンセイ ナンチョウ エ ノ ナイジ サイボウ チリョウホウ カイハツ : カンサイボウ ホーミング キコウ オ オウヨウ シタ イデンセイ ナンチョウ ニ タイスル ナイジ サイボウ チリョウホウ ノ カイハツ

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抄録

難聴の原因は多岐にわたるが,近年の遺伝子改変動物開発技術の向上や多種のモデル動物の開発により多くの病態メカニズムが解明に近づいている.全ての先天性疾患の中でも頻度の高い遺伝性難聴においては,難聴家系や突然変異難聴マウスの遺伝子解析によって多くの遺伝性難聴原因遺伝子が同定されている.しかし遺伝性難聴の根本的治療法は未だ開発されていない.特に哺乳類の有毛細胞は再生能力を持たないため多能性幹細胞移植による有毛細胞修復が近年試みられている.多能性幹細胞移植は薬物治療や遺伝子治療と異なり細胞導入後の病変部への侵入や増殖・分化による病態に応じた修復が期待できる.しかし特殊なリンパ液で充たされた内耳の構造的特徴から,聴力を温存しつつ標的部位に前駆細胞を到達させ分化させることは非常に難しい.動物実験においても幹細胞を内耳病変部にて適切に分化させ,機能を回復させた報告はいまだ少ない.近年有毛細胞以外にも蝸牛線維細胞などの機能異常が単独で難聴病態の引き金となることも明らかとなっており,多様な細胞種による治療戦略が求められている.多能性幹細胞の損傷部への組織誘導(ホーミング)機構や組織環境(ニッシェ,niche)による分化誘導を十分に解明し,これを応用すれば細胞治療は内耳組織の変性や遺伝子異常に対する永続的治療に有効となる可能性が高い.我々は遺伝性難聴モデルとしてのコネキシン26等の遺伝子改変動物を用い,骨髄間葉系幹細胞や人工多能性幹細胞(iPS細胞)等の多能性幹細胞の分化制御や組織誘導の促進によって効率の高い内耳細胞治療法の開発を進めてきた.

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 141 (4), 191-194, 2013

    公益社団法人 日本薬理学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (31)*注記

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