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- 矢野 一行
- 埼玉医科大学名誉教授
書誌事項
- タイトル別名
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- Medical Insight into the Hot Springs according to Comparisons of the Chemical Compositions of the Hot Springs in Tokyo 23 Wards with those of the Volcanic Hot Springs
- トウキョウ 23 クナイ ノ オンセン セイブン ト カザンセイ オンセン セイブン ト ノ ヒカク ニ ヨル オンセン イガクテキ コウサツ
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抄録
東京周辺にはボーリングで地下深く掘り、地温勾配による熱源で温められた深層水を汲み上げ、さらに、加温した新しい温泉が次々と誕生し、天然温泉と称して一般に広く利用されている。しかし、これらの温泉の医学的効果が古くから知られている火山性温泉に比べてどの程度のものであるか等の客観的評価については不明である。<BR> そこで、これらの点を明らかにするために、ナトリウム—塩化物泉として東京-Aと熱海温泉、ナトリウム—炭酸水素塩泉として東京-Bと鳴子温泉を選び、それらの温泉からランダムにインターネットを通して温泉成分表を入手し、それぞれの温泉水に含まれている成分を比較することで検討した。<BR> 東京23区内の温泉はいずれも非火山性温泉であるので、火山性温泉に特有の硫黄化合物や二酸化炭素のような薬理作用の知られている成分の含量は少ない。また、これらの源泉の温度が低いため入浴には加温する必要があり、湧出後のこれらの操作による温泉成分の劣化は避けられない。これらのことより、東京の温泉(-A, -B)に火山性温泉と同様の薬理効果を期待することはできない。しかし、多量の海水成分を含む東京-Aには温熱、浮力、静水圧などによる物理的効果は期待できるが、炭酸水素塩以外の成分が殆ど含まれていない東京-Bではこの効果も少ない。<BR> さらに、大都会の真っただ中にある東京の温泉に熱海温泉のタラソセラピーや鳴子温泉の森林浴のような環境因子(自然·気候)の変化によってもたらされる変調効果を期待することにも無理がある。<BR> 温泉の医学的効果の本質は、活性酸素の産生を抑え、その働きを抑制するとともに、活性酸素等によって傷んだ組織を修復し、修復不能の細胞は分解·除去することで、健康を取り戻すことにあると考えられる。これらの点からして、東京の温泉にはそれなりの癒し効果はあるものの古くから知られている火山性温泉のような医学的効果を期待することはできない。
収録刊行物
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- 日本温泉気候物理医学会雑誌
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日本温泉気候物理医学会雑誌 76 (3), 207-214, 2013
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282681546490496
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- NII論文ID
- 10031175998
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- NII書誌ID
- AN00186245
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- ISSN
- 18843697
- 00290343
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- NDL書誌ID
- 024773533
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDL
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可