類書と成語(三) : 類書の変容と「出藍」の成立

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  • ルイショ ト セイゴ 3 ルイショ ノ ヘンヨウ ト シュツラン ノ セイリツ
  • Chinese encyclopedia and setphreses(Vol.3) : The Trousformation of Leishu(類書) and the formation of Chulan(出藍)
  • ルイショ ト セイゴ 3 ルイショ ノ ヘンヨウ ト チュラン ノ セイリツ

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抄録

君子日く、学は以て己むべからず。青は之を藍より取りて藍より青く、冰は水之を為して水より寒し。  これは、『荀子』勧学篇言頭の一文である。荀子は、いわゆる天人の分や性悪説を背景に、人間の後天的な作為的努力、すなわち学問による自己改革の重要性を力説する。『荀子』全篇の最初に勧学篇が置かれ、また、その冒頭部が右のような文章によって開始されるのは、そうした荀子の思想を端的に表明するものであると言えよう。  そしてまた、この冒頭部は「出藍の誉れ」の出典としても著名な箇所である。現在、この成語は、「弟子が師よりも優れる」という意味で人口に膾災している。しかし、右の『荀子』の原文には、「出藍」という表現を導くために必要な「出」という文字は見当たらない。また、その原義も、個人の学問による自己改革の重要性を説くものであって、必ずしもヽ弟子が師より勝るという師弟関係を説くものではない。  それでは、こうした成語の表現と意味とは、いかなる経緯によって変化し、また同定して行ったのであろうか。筆者は既に、中国の古典を出拠とする成語の誕生について、中国古代の百科全書「類書」との関わりから考察を加えている札、本稿では、この「出藍」の成立過程を辿りながら、類書と成語との関係、及び類書自体の性格の変化について検討を加えてみることとしたい。  なお、後述のように、この成語は現代中国では「青山千藍」、日本では「出藍(の誉れこ「青は藍より出でて藍より青し」などの表現が並存しているが、本稿では、この成語を表す場合、便宜上「出藍」と称し、またその出拠とされている『荀子』勧学篇の該半部分を便宜上「勧学」章と呼ぶことにしたい。

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