<学位論文要旨>皮膚温制御に関する実験臨床心理学的研究 : 教示,フィードバック,認知的媒介の役割  [in Japanese] <Summary of Doctorate>Experimental-clinical Studies of Skin Temperature Control : Roles of Instructions, Feedback, and Cognitive Events  [in Japanese]

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Abstract

臨床心理学的に重要な課題である負の情動の鎮静を得るために,身体的弛緩を第1の標的とする弛緩法の開発が求められている。その上昇が心的弛緩と対応する末梢皮膚温は,測定に伴う患者ならびに治療者の負担が軽い。また,末梢皮膚温の上昇は,弛緩習得の基礎と考えられている。本研究は,皮膚温制御の効果的な訓練方法を開発し,それを臨床場面に適用に関する上での1つの指針を提出することを目的とした。第1章(これまでの研究展望)今日までの皮膚温制御の心理学的研究を概観し,次の問題点を明らかにした。(1)先行研究の結果より,3種の教示(方略教示,標的反応教示,安静教示)の中では,方略教示が末梢皮膚温の上昇方向への制御に最も有効であるといえる。しかし,訓練前皮膚温を統制した実験で,3種の教示の効果を直接比較した研究は報告されていない。(2)従来の訓練手続きでは,同一教示条件内で,フィードバックの効果は十分検出されていない。(3)個人の皮膚温制御成績に応じて基準を設定する変化基準法が臨床場面で用いられているが,その皮膚温制御上の効果は実証されていない。(4)皮膚温変化と他の心身の状態との関係についての知識と,自発的方略が,皮膚温制御の認知的媒介として重要視されるが,これらは,同一実験内で比較検討されていない。以上の問題点を考慮し,本研究における実験的検討の目的を設定した。第2章(実験1)教示とフィードバックが皮膚温制御に及ぼす効果を,伝統的な手続きにのっとって,直接検討した。26名の男子大学生を3種の教示とフィードバックの有無の組み合わせからなる6群,方略教示・フィードバック(ST-F),方略教示・フィードバックなし(ST-NF),標的反応教示・フィードバック(RI-F), 標的反応教示・フィードバックなし(RI-NF),安静教示・模擬フィードバック(Rest-SF),安静教示・フィードバックなし(Rest-NF),のいずれかにふりわけた。安静期に続いて,各群の条件の下で,右手人差指皮膚温上昇訓練を実施した。方略教示には,自律訓練両腕両脚温感公式を使用した。方略教示は,標的反応教示,安静教示よりも皮膚温を上昇させ,主観的な弛緩を高め,皮膚温制御にとって最も有効な教示条件であることがわかった。フィードバックに皮膚温制御効果は認められなかった。先行研究の結果と比較し,伝統的な訓練手続きでは,フィードバックは皮膚温制御に有効ではないと結論した。第3章(実験2)第2章でその有効性が実証された方略教示による皮膚温制御をさらに促進させる方法の開発のため,変化基準法の効果を検討した。5名の男子大学生からなる方略教示・フィードバック・変化基準法(ST-F-CC)群では,皮膚温上昇訓練を行なう中で,皮膚温制御成績の向上に応じてフィードバックの基準をあげた。この群のデータを,実験1のST-F,ST-NF群のそれと比較した。常に安静期の皮膚温を基準値とした固定基準・フィードバック(ST-F群)やフィードバックなし(ST-NF群)では,皮膚温制御成績がセッション間で大きく変動するのに対し,変化基準法フィードバック(ST-F-CC群)は成績を安定させ,徐々に向上させるという特徴が認められた。成績の停滞や後退による訓練からの離脱を防ぐ上で,方略教示への変化基準法フィードバックの併用が有効であることを論じた。第4章(実験3)方略教示を行なわずに,フィードバックによって皮膚温制御を得る方法について検討した。従来の訓練手続き,安静期の後に皮膚温上昇訓練のみを行なうベースライン-弛緩(B-R)タイプ課題が,一方向的であるために,適切な認知的媒介の発見を困難にしている可能性がある。そこで,皮膚温上昇訓練だけでなく,下降訓練も行なう両方向訓練を採用した。20名の男子大学生を10名ずつフィードバック(FB)群とフィードバックなし(NFB)群にふりわけ,皮膚温の上昇と下降訓練を実施した。2つの方向への制御訓練間に試行間間隔をはさみ,その順序を被験者間,セッション間で逆転させた(間接法両方向訓練)。FB群においてのみ,皮膚温が訓練方向に対応して変化し,フィードバックの効果が認められた。皮膚温制御における認知的媒介の役割についても検討を加えた。訓練前に,被験者の多くは,皮膚温上昇と他の心身の状態の関係について誤った知識を持っていた。この「知識」は,フィードバック訓練によって修正された。フィードバックが誤った知識を修正し,その結果効力が生じた自発的方略によって皮膚温が制御されることが示唆された。NFB群では,訓練後も誤った「知識」が修正されなかったことから,皮膚温変化の知覚が困難であると考察した。第5章(実験4)標的反応教示下での皮膚温制御に及ぼすフィードバックの効果を,直接法両方向訓練を用いて検討した。あわせて,皮膚温制御における認知的媒介の役割についても検討を加えた。14名の被験者を7名ずつ,フィードバック(FB)群とフィードバックなし(NFB)群にふりわけた。

Journal

  • Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences

    Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (19), 165-167, 1993-12-31

    Hiroshima University

Codes

  • NII Article ID (NAID)
    110000482194
  • NII NACSIS-CAT ID (NCID)
    AN10435936
  • Text Lang
    JPN
  • Article Type
    departmental bulletin paper
  • ISSN
    1340-8364
  • Data Source
    NII-ELS  IR 
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