<学位論文要旨>環境汚染下の水圏底質における糸状菌類の生態および分類学的研究  [in Japanese] <Summary of Doctorate>Ecological and taxonomic studies on filamentous fungi of sediment in fresh water, brackish water and marine environment, with special reference to water pollution  [in Japanese]

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経済の高度成長期以後,わが国の水圏は産業の発達,都市開発および人口の集中化などが原因で,自浄作用を上回る有機物が流入し,汚濁が進行している。こうした水圏の汚濁を知る方法としては,BODなどを測定する理化学的な方法,バクテリア数などを用いる生物学的な方法がある。しかし,生態系の分解者である糸状菌類について,環境汚染下における生態とそれによる環境汚染の評価については未だ明らかにされてない。水圏に生息している菌類についての研究は,これまで主として淡水域においては鞭毛菌類,水生不完全菌類,また,海水域においては木材着生菌類,海藻着生菌類などを中心に行われているが,環境汚染下の水圏底質の菌類についての報告はほとんどない。本研究の目的は,水圏(河川,海)とくに内湾の底質に生息する糸状菌類と環境汚染との関係,および底質糸状菌類の環境浄化に果たす役割について究明することである。まず,淡水域-汽水域-海水域における底質糸状菌類の生態を明らかにするとともに,分離糸状菌類の中から汚染指標菌の検索を試みた。さらに,これら汚染指標菌を用いた環境調査の有用性を確認するため,汚染が進行している河口域において調査を行い,理化学試験の結果と比較検討した。つづいて,底質より分離した主要糸状菌類の生理学的性質(低酸素あるいは高塩濃度下における胞子の発芽や菌糸の生育)について検討し,その結果と生態的分布との関連性について考察した。また,底質糸状菌類の海水環境下における物質分解の役割を検証するべく,セルロース分解能についても検討した。1.主要水圏底質糸状菌類の生態1-1.河川底質の糸状菌類相自然河川(境川)および市街河川(本明川)の底質の糸状菌類相を比較調査した。両河川とも上流より下流になるにしたがい出現種数は次第に増加したが,感潮域では減少した。また,自然河川よりも市街河川の方が出現種数が多かった。河川の上流域からは植物寄生性および植物腐生性菌類であるAureobasidium, Arthrinium, Drechslera, Pestalotiopsis, Pithomyces, Umbelopsisなどが分離され,上流域の糸状菌類相は流域の植生や土壌の影響を受けているものと判断された。一方,下流域の糸状菌類相は排水の影響を受けているものと考えられた。汚濁水質に固有のGeotrichum candidumをはじめ,Aspergillus niger, Penicillium oxalicumなどの不完全菌類とEupenicillium, Talaromyces, Eurotium, Neosartoryaなどの子のう菌類によって構成され,かつ出現種数も豊富であった。最下流域の河口部では,逆に出現種数は減少するが,この主因は塩濃度の影響にあると思われ,海水環境に適応した菌類だけが選択され生存するものと推察される。1-2.汽水域底質の糸状菌類相汚染地域(長崎地区)と非汚染地域(有明地区)の汽水域底質の糸状菌類相を比較調査した。出現種数については両者の間で有意な差は認められなかったが,主要分離菌の分離頻度は長崎地区の方が有明地区より顕著に高かった。一方,出現種数の季節的変動については非汚染地域で著しかった。分離された主要な菌類は,河川底質と比較して大きな相違は認められなかったが,汽水域での汚染を特徴づける糸状菌類としてSordaria humanaが高頻度に分離され,本菌が環境汚染指標菌として利用できることを示唆した。1-3.海域底質の糸状菌類相まず長崎湾を対象とし,湾奥部から湾口にかけて水平方向の糸状菌類相を調べた。汚染地域すなわち湾奥部が湾口よりも出現集落数および出現種数の両者とも多かった。出現した主要糸状菌類の中でAscodesmis sphaerospora, A. macrospora, Talaromyces helicus var. helicus, Zopfiella latipes, Gilmaniella humicolaは湾奥部から多数分離された。とりわけAscodesmis sphaerospora, A. macrosporaは汚染された海水域から高頻度に出現したが清浄域からは分離されず,これらの菌の動向から環境汚染の実態を知るための手掛りが得られることがわかった。なお,汚染汽水域から高頻度に分離されたSordaria humanaは海水域からは分離されなかった。垂直方向の糸状菌類の分布を大村湾を対象に調べた。コアーサンプラーを用い,S (0-1cm),B1 (1-6cm),B2 (6-11cm),B3 (11-16cm)の4層から採泥し試料とした。4層の中で出現集落数および出現種数がもっとも多かったのはS層であり,下層になるにしたがって急激に減少した。湾奥部の汚染地域では最下層のB3層でも清浄域のS層以上の出現集落数が得られ,垂直方向の出現集落数の分布も汚染度と密接な関係にあることが明らかになった。Talaromyces, Neosartorya, Pseudeurotium, EupenicilliumなどはS層からB3層まで分布していたが,Apiosordaria, Byssochlamys, Microascus, MonascusなどはS層からのみ分離された。

Journal

  • Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences

    Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (21), 243-246, 1995-12-28

    Hiroshima University

Codes

  • NII Article ID (NAID)
    110000482247
  • NII NACSIS-CAT ID (NCID)
    AN10435936
  • Text Lang
    JPN
  • Article Type
    departmental bulletin paper
  • ISSN
    1340-8364
  • Data Source
    NII-ELS  IR 
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