<学位論文要旨>海水中二酸化炭素の時・空間変化と大気・海洋間の交換量に関する研究  [in Japanese] <Summary of Doctorate>Study on the time and spatial variation on carbon dioxide in seawater and its exchange amount between atmosphere and ocean  [in Japanese]

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Abstract

地球温暖化気体である二酸化炭素(CO_2)が地球規模で1.5ppmv/年増加していることが測定され,人為的に大気に放出されたCO_2 (7GtC/年)のうち,3GtC/年が大気に残留することに起因しているとされている(ICPP, 1992)。現在,放出されたCO_2の海洋と植物への分配比が明らかでなく,地球規模の炭素循環の研究課題となっている。この課題は,Yanagi (1993)により,海洋のCO_2吸収に果たす役割を解明することで説明が出来る可能性があると指摘されている。しかし,様々な海域における細かい海水中二酸化炭素(pCO_2)の情報が不足している。近年,沿岸海域がCO_2の交換に果たす役割が外洋に比べ大きいことが指摘されていることから,沿岸域における大気・海洋間のCO_2交換の研究は,地球規模の炭素循環の解明のために意義深いものと考えられる。従前のシャワー法によるpCO_2測定器は,pCO_2値の決定に不確定な要素があったので,測定器の開発を試みた。開発した測定器は,値を明確に決定でき,シャワー法に比べ約2000分の1の試料海水量(約250ml)で測定可能である。研究室内で2ℓの試料海水の水温を一定にし,測定値の繰返し精度を求めたところ変動係数は,0.2∿0.5%であった。また,1993年(スクリップス海洋研究所),1995年(北海道大学臼尻水産研究施設),1996年(Meteor号M-36-1航海,北大西洋)に行われた国際・国内pCO_2相互比較測定に参加し,本測定器が環境測定に耐える測定器であることを確認した。しかし,測定器間における測定値差の問題は解消されていない。そこで,本論中のpCO_2の値は,自己開発した測定装置の値のみを使用した。大気中CO_2 (PCO_2)の年増加率算出測定は,1980年5月∿1989年7月の10年間連続して,岡山県玉野市渋川において行った。日変化は夜間高く,日中は低い1日周期があり,植物の昼間の光合成と夜の呼吸作用に従う様相が見られた。季節変化は夏期の高値と冬期の低値であった。冬期の日最低値の月平均値を用いて計算したPCO_2年増加率は,3.1ppmv・year^<-1>で,Komhyr等(1985)やTanaka (1983)の指摘した増加率の約2倍であった。pCO_2の定点連続測定は,1992年6月∿1993年7月に毎月2∿7日間,岡山県邑久郡牛窓において行った。日変化は,季節にかかわらず,夜間に最高値を,昼間に最低値を示す1日周期と,それより振幅の小さい半日周期が認められた半日周期の変化は潮汐と対応している様相が見られた。日振幅は,夏期が冬期に比べ大きく,各々約100,約25μatmであった。季節変化は,夏期に高く,冬期に低い1年周期を示した。年振幅は約200μatmで,東大平洋定点(N50o, W145o, Wong and Chan, 1991)の約10倍,瀬戸内海の沖合(伊予灘,Kumamoto et al., 1995)の3∿5倍であった。pCO_2の水平分布測定は,大阪湾及びその周辺海域において,1994年3月と1994年7月に行った。50μatm毎の等濃度線を描くと,等濃度線は,3月と7月ともほぼ同じ位置に存在した。7月は3月に比べ,50∿100μatm高値を示した。3月はCO_2についてSink,7月は鳴門海峡,明石海峡,備讃瀬戸東部がSource,その他の海域はSinkであった。外洋におけるpCO_2の日変化測定は,東京大学所属「白鳳丸」KH-92-5航海で,1992年10月31日∿12月7日,西太平洋赤道海域の定点(S0.0,E156.0)で行った。日変化は,318∿343μatmで,昼間低く,夜間高い1日周期を示し,沿岸域に比べ狭い範囲であった。Oudout等(1989)は,東大西洋熱帯域において光合成によるpCO_2の減少は,4.6μatmであると示したが,我々の試算では,4.8μatmとなった。このことは,pCO_2への生物影響が東大西洋熱帯域と西太平洋熱帯域でほぼ同じであることを意味している。外洋におけるpCO_2の鉛直分布は,水深800mまでの測定を行った。赤道定点(S0.00,E156.00)における測定は,1992年11月12∿27日,東京大学「白鳳丸」KH-92-5航海で5回行った。北大西洋海域における測定は,1996年6月7∿19日,キール大学所属「Meteor号」M-36-1航海で,採水点は,N46.390,W41.540,N41.550,W34.050,N33.270,W22.100の3地点であった。鉛直分布は,基本的に水深と共に高くなっていた。赤道定点とN46.390,W41.540地点の25∿75mでpCO_2は極小値を,溶存酸素とクロロフィルaは極大値を示し,海水中の生物活性が,pCO_2の極小値に寄与していることを示唆していた。水深75m以深では,水深の増加と共に増加した。100m付近からの光合成の進まない水層でpCO_2が急に増加するのは,生物死体の分解のために細菌が増殖しpCO_2増加に関与していると考察できた。

Journal

  • Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences

    Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (24), 179-180, 1998-12-28

    Hiroshima University

Codes

  • NII Article ID (NAID)
    110000482347
  • NII NACSIS-CAT ID (NCID)
    AN10435936
  • Text Lang
    JPN
  • Article Type
    departmental bulletin paper
  • ISSN
    1340-8364
  • Data Source
    NII-ELS  IR 
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