<学位論文要旨>地衣共生藻の多様性とその共生関係に関する研究  [in Japanese] <Summary of Doctorate>The Diversity and Symbiosis of Lichen Photobionts  [in Japanese]

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第I章序論 地衣類が菌類と藻類の共生によって成立した複合生物であるということは19世紀半ばから指摘され,実際に菌類と藻類を分離した研究も行われた。今日までの100年以上の間,共生藻について様々な知見が明らかにされてきたが,そこで得られた情報の多くは藻類学にのみ貢献してきたものであった。地衣類学,特に分類学の分野では,研究は乾燥標本に基づいて行われてきたため,共生藻に関しては緑藻かシアノバクテリアかの区別には着目されたが,これは単に地衣体の色に関係するためであり,地衣類の種と共生藻の種との関係については重要視されず,未だ充分に研究されないままになっている。このような状況をふまえ,地衣類における共生藻の多様性を解明し,地衣類の分類,生態における共生藻の意義を明らかにすることを目的として本研究を行った。研究を進めるに当たり,まず大型地衣類の主要な共生藻であるTrebouxia属について分類学的な再検討を行った。次に日本各地で採取した地衣類の共生藻についてその多様性を検討した。さらに,生育環境とのかかわりを検討するために海岸に着目し,そこに生育する地衣類の共生藻について研究を行った。ここで得られた知見は,近年脚光を浴びている遣伝子レベルでの地衣類の系統解析をはじめ,様々な分野へ重要な情報を与えるものと考える。第II章共生藻Trebouxia属の分類学的再検討 現在までにおよそ200種の地衣類から100種以上の藻類が共生藻として報告されてきた。そのうち最も高頻度で分離されるのはTrebouxia属(トレボウクシア藻綱,緑藻類)であり,27種が報告されている。しかし,当初からTrebouxia属に関する分類学的な研究は,命名規約上の誤りが多くあり,それは近年まとめられたTrebouxia属の分類体系や気生藻類の検索図鑑でも完全に処理されないまま放置され,現在に至っている。本研究では,世界各地のカルチャー・コレクション(Culture Collection)に保存,継代培養されている基準藻株を入手し,また,日本各地で採取した地衣体試料から共生藻を分離・培養し,それらを用いて本属の分類学的再検討を行った。基準藻株はCCAP (Culture Centre of Algae and Pro-tozoa, UK),SAG (Sammulung von Algenkulturen, FRG),UTEX (Culture Collection of Algae at the University of Texas at Austin, USA)から分与された26種38株,日本産地衣類の共生藻は12科34属110種の地衣体試料から分離・培養したTrebouxia属330株を用いた。本研究で見いだされた分類形質は,1)栄養細胞の形態,2)葉緑体およびピレノイドの形態,3)生活史における自生胞子形成の有無とその形態である。栄養細胞の形には,球形,亜球形,楕円形,卵形,西洋梨形が認められた。T. erici, T. glomerata, T. irregularis, T. pyriformisは特に形態変異が著しく,栄養細胞の形は有効な分類形質ではなかった。葉緑体の形態は切れ込みの状態により,anticipata型,arboricola型,glomerata型,jamesii型,higginsiae型の5型に分けることができた。これらは対数増殖期で非常に安定しており,有効な分類形質と言える。ピレノイドは,数およびデンプン鞘の有無により3型が認められた。すなわち,ピレノイドが1個のもの,複数のもの,複数でかつデンプン鞘を持つものである。ピレノドの数は若い栄養細胞では全て1個であるため,生活史を通しての観察が必要である。生活史では自生胞子形成の有無により大別され,さらに自生胞子を形成するものには胞子嚢群を形成するものとしないものが存在することが分かった。以上の分類形質により,Trebouxia属を検討した結果,現在までに報告された27種は,4種を除き,16種7同種異名とするのが妥当であるとの結論に達した。T. magnaは,葉緑体の形態的特徴により,本属ではなくDictyochloropsis属に属するべきと考える。本研究で検討できなかった3種については今後追求する必要がある。第III章共生藻の取り込みの多様性と特異性 かつては地衣類の共生関係は種特異的であり,頭状体や子実体を除く地衣体部分では,地衣類一種が共生できる藻類は必ず一種であると考えられていた。しかし現在では,一種の地衣類でも異なった地衣体では共生藻も異なる場合があることが明らかにされている。また,同種の藻類でも異なった地衣類の共生藻として出現することからも,地衣類の種と共生藻の種との関係は必ずしも一対一ではなく,実際には非常に多様であると言える。そこで,日本産地衣類について地衣類の種と共生藻種の関係の詳細を明らかにする目的で本研究を行った。

Journal

  • Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences

    Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (27), 157-160, 2001-12

    Hiroshima University

Codes

  • NII Article ID (NAID)
    110000482410
  • NII NACSIS-CAT ID (NCID)
    AN10435936
  • Text Lang
    JPN
  • Article Type
    departmental bulletin paper
  • ISSN
    1340-8364
  • Data Source
    NII-ELS  IR 
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