<学位論文要旨>ラット小脳一酸化窒素合成酵素の反応機構の基礎研究  [in Japanese] <Summary of Doctorate>Kinetic Studies on the Successive Reaction of Rat Neuronal Nitric Oxide Synthase  [in Japanese]

Access this Article

Search this Article

Author(s)

Abstract

序論 一酸化窒素(NO)は,脳神経系における重要な情報伝達物質であるとともに,血管の拡張による血圧調節とマクロファージの生体防御反応に関与する作用物質でもあり,近年注目を集めている。生体内のNOは,一酸化窒素合成酵素(NOS)により産生される。NOSは,1.5分子のNADPHと2分子の酸素分子を消費して,アルギニンを基質としてシトルリンとNOを合成する。NOSの反応は,NADPHから供給される電子を要求する酸素添加反応であり,P450の反応と類似する。NOSは,NADPH結合部位を有する還元酵素領域と,ヘム鉄を含む酸素添加酵素領域から構成され,その融合部位にカルモジュリン結合部位が存在する。細胞内のカルシウムイオン濃度の上昇により生成するカルシウムイオン・カルモジュリン複合体がNOSに結合して,NOSにおける還元酵素領域から酸素添加酵素領域への電子伝達を促進する。NOSの反応では,第一段階の反応でアルギニンから水酸化アルギニンを生成し,第二段階の反応で水酸化アルギニンからシトルリンとNOを生成するとされていた。しかし,中間代謝物と考えられている水酸化アルギニンの生成が少量であるため,その反応機構の直接的な証明はなされていなかった。また,その2段階の反応の制御機構を明らかにすることは,NOの生理的役割を解明するためにも重要である。本論文では,大腸菌により大量発現させ精製したラット小脳の神経型NOS(nNOS)を用いて酵素反応の速度論的な解析を行い,以下の4点を明らかにした。実験方法 nNOSは,pCWnNOSプラスミドを用い,大腸菌BL21を形質転換させて発現し,カラムクロマトグラフィーを順次行って精製した。溶液中のnNOS濃度は,一酸化炭素がnNOSのヘムに結合すると生ずる差スペクトルを測定することで決定した。反応迅速停止法には,ユニソク製の反応迅速停止装置(MX-200)を使用した。反応開始前に基質となる[^3H]-アルギニンと過剰量のnNOSとを入れておくことで酵素・基質複合体を形成させ,非放射性アルギニンとNADPHを含む反応開始液をミキサー1で迅速に混合することで反応を開始した。数十ミリ秒後,反応コイル中の反応液を追い出し液で押し出し,ミキサー2で反応停止液と瞬時に混ぜることにより反応を停止した。反応生成物は,ODSカラムを用いたHPLCにより分離し,[^3H]-放射性生成物を定量した。第一章ラット小脳-酸化窒素合成酵素の反応中間体の同定と2段階連続反応の証明 基質であるアルギニンがnNOSに対し大過剰存在する定常状態下の反応では,反応中間体はほとんど検出できない。そこで,数十ミリ秒の時間精度のある反応迅速停止装置を用いて,[^3H]-ラベルした基質の大部分が酵素に結合する条件下で酵素反応を開始し,数十ミリ秒間隔でその生成物を回収し,検出することで,反応中間体の同定を行った。酵素反応1サイクルの経時変化を観測すると,最初に反応中間体として[^3H]-ラベルした水酸化アルギニンが増加し,その減少にともない最終生成物として[^3H]-ラベルしたシトルリンが増加した。この経時変化を,中間代謝物が酵素から解離しないで最終生成物になる連続反応機構として解析した結果,実測値と理論曲線が非常に良く一致した。これらの結果から,nNOSは,反応中間体である水酸化アルギニンが酵素からほとんど解離することがない連続的な2段階の反応によって,アルギニンからシトルリンとNOを生成することが証明された。第二章ラット小脳-酸化窒素合成酵素の2段階連続反応の律速段階 反応迅速停止法により得られたデータを,nNOSの反応機構から導かれる1サイクルの反応速度式を用いて解析した結果,アルギニンから水酸化アルギニンヘの変換反応の速度定数(k1),水酸化アルギニンからシトルリンとNOへの変換反応の速度定数(k3),水酸化アルギニンの酵素からの解離の速度定数(k2)を求めた。さらにk1,k2,k3を定常状態の速度式に代入し最終生成物であるシトルリンの酵素からの解離の速度定数(k4)を算出した。k4は,反応速度定数として最も小さい値を示した。各反応速度定数の温度依存性をアレニウスの活性化エネルギーの式に代入し,各反応速度定数の活性化エネルギーを算出した結果,k4の活性化エネルギーが最も大きくなった。以上の結果から,nNOSの2段階連続反応の律速段階は,最終生成物であるシトルリンの酵素からの解離であることが示された。第三章NADPHからの電子の供与によるラット小脳-酸化窒素合成酵素の2段階連続反応制御機構 反応中間体である水酸化アルギニンは,尿素サイクルにおけるアルギナーゼに対するインヒビターであり,nNOSの2段階連続反応における水酸化アルギニンの生成を調節するメカニズムの解明は,重要な生理的意義を持っている。

Journal

  • Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences

    Memoirs of the Faculty of Integrated Arts and Sciences, Hiroshima University. IV, Science reports : studies of fundamental and environmental sciences (27), 173-175, 2001-12

    Hiroshima University

Codes

  • NII Article ID (NAID)
    110000482414
  • NII NACSIS-CAT ID (NCID)
    AN10435936
  • Text Lang
    JPN
  • Article Type
    departmental bulletin paper
  • ISSN
    1340-8364
  • Data Source
    NII-ELS  IR 
Page Top