セクシュアリティ中心主義への問い : キャサリン・A・マッキノン理論の検討

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タイトル別名
  • Questioning the Sexuality-centered Approach: A Study of Catharine A. MacKinnon's Theory
  • セクシュアリティ チュウシン シュギ エ ノ トイ キャサリン A マッキノン リロン ノ ケントウ

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抄録

アメリカ合衆国の著名な法学者キャサリン・A・マッキノンの提起するフェミニズム理論を検討する。まず、彼女の最重要課題が、セクシュアリティにおける平等であることを明らかにする。マッキノンは、現在のセクシュアリティ概念自体が男性優位社会の構築物であるとして、新たなセクシュアリティ概念の構築を主張するが、その具体的な内容は示さないままである。本稿は、それがマッキノン理論の根本的問題に由来すると捉えて、その克服方法を考察するものである。根本的問題とは、生殖の社会性という視点の欠落と、性別以外の社会的関係の無視である。それらを土台とするマッキノン理論は、「人種」、民族、階級等々の社会関係に規定されているセクシュアリティの現実を変革する具体的ヴィジョンを示すこともできない。男女平等をめざすにあたり、性別を理由とする不公正を正すうえで、セクシュアリティ追究の平等を中心に据える彼女の姿勢は、性別以外の人間の社会的諸関係を捨象したセクシュアリティ中心主義ともいうべきものである。それは、性別に限られない諸関係の中に位置づけられて生きている女性達の現実を打破する思想・運動の中心課題にはなりえない。マッキノンは、私的領域が女性抑圧の温床となることが避けられないとしてその廃止を提起する。それが誤った現状認識に立つ危険な提起であることを、本稿は論じている。ファリダ・アクターを主たる参照先としながら、公・私二領域論によっては社会の構造と人の営みを捉え得ないことと、マッキノンの提起が人の営みを国家が統括する法の監視にさらす危険を孕むことを明らかにする。近代以降広範に浸透した公・私二領域論を克服するためには、人間存在の二重性を再認識し、「個」を社会的に埋没させることのない民主的な社会関係の創造とともに、従来の公・私二領域という二元論を超える新しいイデオロギーの創造が必要とされる。

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