『ワット』試論 : サムのワット経験(第2部)

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タイトル別名
  • An Essay on Watt : Sam's Experience of Watt(Part 2)

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抄録

『ワット』はノット邸体験をめぐるワットの物語である。三章では語り手としてサムが登場し、どのようにワットがサムに語ったのかをサムが証言している。しかし、冒頭の部分と最後の部分にはワットは語りの場には存在しない。また、冒頭の部分と最後の部分は伝統的な全知的語りになっている。本論は、このような語りの上での変化がなぜ起こったのか、あるいはなぜそのように書かれているのかという問題から論を進めて行く。三章でのサムの証言から、ノット邸体験はワットによる語りとそれを書き付けたサムの語りという二重の語りによって存在すると言える。この二重性という視点によって、ノット邸経験の意味がより明確になり、ワット的人間の精神の有り様から、ワットにとってもサムにとっても語りのなかにのみノットの意味が存在する仕組を論じることができる。本論は、以上の観点から『ワット』の語り手をサムと論定し、語り方そのものがワットによるノット体験から導き出された結果であると論じている。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1571698601742824064
  • NII論文ID
    110000990337
  • NII書誌ID
    AN00244556
  • ISSN
    02862360
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • CiNii Articles

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