円ドルレートの変動とアジア諸国の為替レート政策

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  • エン ドルレート ノ ヘンドウ ト アジア ショコク ノ カワセ レート セイサク
  • エン ドル レート ノ ヘンドウ ト ショコク ノ カワセ レート セイサク
  • Fluctuations in the yen/dollar exchange rateEast Asian business cyclesand Asian currency crisis

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Abstract

東・東南アジアにおいて共通の為替レート管理の枠組みを求める声は多く, その具体的な提言として, 11本以外の東・東南アジア諸国が自国通貨を先進国通貨のバスケットにペッグする共通バスケット・ペッグ, 日本以外の国々が自国通貨を円にターゲットする円ペッグ, 日本を含む全ての東・東南アジア諸国のドル・ペッグによる「アジアドル圏」の形成などが挙げられる。これらの提言の背景には円ドルレートの変動がアジア諸国経済に与える影響への懸念があり, 具体的には, (1)アジア諸国が金融危機に至るまで事実上のドル・ペッグを行っていた, (2)そのため, 円ドルレートの変動がアジア諸国のマクロ経済の不安定化をもたらしており, 特に1990年代後半の円安ドル安がこれらの国々の輸出不振と対外収支の悪化を通じて通貨危機の直接・間接の原因となった, (3)通貨危機収束後にアジア諸国がドルペッグに回帰しつつあり, 円ドルレートの変動→アジアの景気変動という構造が払拭されていないという認識がある。しかし, 多くのアジア諸国通貨の対ドルレートは実際には円ドルレートの変動が日本と当該の輸出競争力の変動に直結するほど硬直的ではなく, また, 一般に円ドルレートがアジア諸国の輸出や景気に与える影響と考えられているものかなりの部分は国際市場における電子・情報通信関連製品の需要・供給ショックを反映している。さらに, アジア諸国の産業構造や対外経済関係の多様性を考慮すれば, 域内共通の(擬似)固定為替制度を採用することのメリットは必ずしも明らかでなく, むしろ各国のマクロ経済の不安定要因となる可能性が高い。

Journal

  • 経済学雑誌

    経済学雑誌 105 (3), 1-37, 2004-12

    大阪市立大学経済学会

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