咬みしめ強さと歯列における咬合力分布

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  • Magnitude of clenching and bite force distribution on the dental arch

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抄録

感圧フィルムを用いた咬合力測定法により, 歯列上咬合力の多点同時測定が可能となった.そこで, 歯列における咬合力分布を咬合診査の指標として応用することを検討するため, 正常者の中心咬合位における咬合力分布を明らかにし, さらに咬みしめ強さ, 咬合力分布, 咀嚼筋活動の関連を検索した.正常有歯顎者4名を用いて, 中心咬合位で種々の強さの咬みしめを行わせた.その際, 咬合力と咀嚼筋活動の同時記録を行った.咬合力は感圧フィルム「Dental Prescale 50H typeR」, ならびに専用の解析装置「Occluzer FPD-703」を用いて記録し, 下顎各歯牙の咬合力を測定した.咬合力分布は, 下顎各歯牙の咬合力が歯列全体の咬合力(総咬合力)に占める割合(咬合力比)として分析した.表面筋電図は両側咬筋, 両側側頭筋前, 後部より導出した.各被験筋の筋活動量は, 両側咬筋活動量の和が最大値を示した前後0.5秒間を分析区間とし, その積分値を求めた.その結果, 中等度以上の咬みしめ強さにおいて, 各歯牙の咬合力比は総咬合力の増加にかかわらずほぼ一定となることが明らかになった.各歯牙の咬合力比は前後的には後方歯ほど大きく, 第二大臼歯において最大値を示した.しかしながら, 同名歯牙の咬合力比は被験者間で異なった.また, 咬合力は左右側歯列でほぼ対称であることが明らかになった.一方, 総咬合力の増加に対する各筋の活動量の増加は筋種間, 被験者間できわめて相違し, 総咬合力と筋活動量の間には一定した関係が認められなかった.以上の結果, 正常者の歯列における咬合力分布は, 咬みしめ強さや咀嚼筋活動の相違にかかわらずほぼ一定であり, 被験者の咬合状態を反映していることが明らかになった.このことから, 咬合状態の評価における客観的指標のひとつとして咬合力分布が利用しうることが示唆された.

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