IMZインプラントと天然歯との連結に関する応力解析ならびに咀嚼筋筋活動評価

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タイトル別名
  • Mechanical behavior and masticatory activity when IMZ implants are splinted to natural teeth

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抄録

歯の部分欠損に対しインプラントを応用して機能回復をはかる場合, その上部構造の咬合面形態, 咬合接触状態, ガイド様式, 材質など考慮すべき点が多い. とくにオステオインテグレーションしたインプラントの上部構造と生理的動揺のある天然歯とが同一口腔内に共存するため, それらを連結するかどうかは非常に重要な問題で, 予後に大きく影響を及ぼすと考えられる. 本研究では, 下顎大臼歯部の片側遊離端欠損症例を想定し, その欠損部にIMZインプラントを2本植立し, インプラント上部構造と天然歯クラウンとを連結した場合と, 連結しない場合においてインプラント体および周囲支持組織に及ぼす影響について有限要素法により解析を行い, 検討した. さらに, 同部位に IMZインプラントを植立した臨床症例において咀嚼筋筋活動パターンをEMGプロフィールから機能的に評価し, 検討を加えた. 実験1: 下顎右側第一および第二大臼歯の片側遊離端欠損症例に IMZインプラントを2本植立した. 上部構造として陶材焼付鋳造冠を, また, インプラントエレメントの材料として, ポリオキシメチレン(IME)およびチタニウムを想定した. それぞれのエレメントを組み込んだ上部構造と天然歯クラウンとを連結した場合と, 連結しない場合の合計4条件を対象に矢状断面モデルを作成した. さらに, 荷重条件として天然歯クラウンおよびインプラント上部構造の両方に負荷した場合とそれぞれ単独に負荷した場合について2次元有限要素法によって応力解析を試み, インプラント体および周囲支持組織にどのような力学的挙動を示すか検討した. 実験2: 被験者は, 約7年前にIMZインプラントを植立し, 上部構造装着後臨床的に良好な経過を示し, 本研究の主旨についてインフォームドコンセントの得られた34歳女性とした. 上部構造は隣接する天然歯クラウンと連結させたものと連結させない2種類を製作した. 被験運動は90秒間片側ガムチューイングとし, 咬筋, 側頭筋前部および顎二腹筋前腹から双極性に筋電位を導入した. 下顎運動記録には Mandibular Kinesiograph K-6を用い, 筋電位とともに同時記録し, 咀嚼筋筋活動パターンを観察した. その結果, 以下の知見を得た. 1. 天然歯クラウンとインプラント上部構造とを連結した場合と連結しない場合で応力の発現部位は異なることがわかった. 2. エレメントとしてIMEを用いた場合, 連結の有無にかかわらずIME周辺とインプラント体に均等に応力が生じた. 3. チタニウムエレメントを用いた場合, 天然歯に近接するインプラントで応力の出現する部位が異なり, 限局した応力集中が生じることがわかった. 4. 咬筋, 側頭筋前部, 顎二腹筋前腹の筋活動のピーク時期および振幅の変動は上部構造装着直後ではばらつきがみられたが, 経時的に安定してくることがわかった. 5. 上部構造装着4か月後には天然歯クラウンとインプラント上部構造との連結の有無にかかわらず, 咬筋と側頭筋前部の協調性が得られた. 6. 咬筋, 側頭筋前部, 顎二腹筋前腹の筋活動は連結の有無による差は少ないことがわかった. 以上のことから, 内可動エレメントIMEを有するIMZインプラントを用いた場合, 連結の有無にかかわらず, 良好な応力分散がはかられ, その上部構造と残存歯とが機能的に調和することが示唆された.

収録刊行物

  • 歯科医学

    歯科医学 59 (3), 29-30, 1996

    大阪歯科学会

被引用文献 (7)*注記

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参考文献 (52)*注記

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