1988年7月に長崎県で観測した梅雨末期の豪雨のメソスケールと対流スケールの特徴

書誌事項

タイトル別名
  • Mesoscale and Convective Scale Features of Heavy Rainfall Events in Late Period of the Baiu Season in July 1988, Nagasaki Prefecture
  • Mesoscale and Convective Scale Features of Heavy Rainfall Events in the Late Period of the Baiu Season in July 1988,Nagasaki Prefecture
  • Mesoscale and Convective Scale Features

この論文をさがす

抄録

1988年7月に梅雨末期集中豪雨の特別観測(浅井, 1990)が行われ, ドップラーレーダーや時間・空間的に密なサウンディングデータ(~100km, 3~6時間)が得られた. 本論文では, 主にドップラーレーダーのデータを用いて梅雨末期の豪雨現象のメソスケールと対流スケールの特徴を下層の風系に着目して解析した. 用いたデータは主に長崎県西海町に設置した北大理学部のドップラーレーダーのデータである. 解析した事例は, 1988年7月17, 18日に観測した梅雨前線に伴う降水イベント, 2例(ケース1, ケース2)である. これら2つのケースともクラウドクラスターに伴う降水イベントであった. 降水はメソスケール現象として現れ, 降水量はケース1, ケース2それぞれ局所的に100mmを超した(例えば, 諌早で3時間にそれぞれ165mm, 104mm). ドップラーレーダーの観測からそれぞれのケースをまとめると, ケース1では大雨をもたらすエコーの組織化の原因としては, 発達したエコーから発生したガストフロントによる梅雨前線帯の収束の強化, 及び梅雨前線上に発達したレインバンドと南西海上で発生した孤立したエコーとの合流によるエコーの発達の効果であった. その結果としてレインバンドは大きく発達した. ケース2では, ケース1の約4時間後にケース1で大雨がもたらされた領域とほぼ同じ所に, 弧状に組織化したエコーによって大雨がもたらされた. エコーの弧状に組織化するプロセスにはやはりガストフロントが重要な役割を果していた. さらに, エコーの組織化の直前に暖かく湿った南西風の流入があり, これもエコーの発達に大きく貢献していた. これらの事例解析から明らかになったメソスケールと対流スケールの特徴は, (1)ガストフロントによる梅雨前線帯の収束の強化, (2)エコー同士の合流によるエコーの発達, (3)メソスケールの場での気温, 降水量のコントラストであった.

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 74 (4), 539-561, 1996

    公益社団法人 日本気象学会

被引用文献 (10)*注記

もっと見る

参考文献 (57)*注記

もっと見る

キーワード

詳細情報

問題の指摘

ページトップへ