不妊・不育症例における抗核抗体スクリーニングの検討

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  • Antinuclear Antibody Measurement as a Screening Test for Sterile and Infertile Women with Immunological Abnormality

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抄録

原因不明とされている不妊・不育症例のうちに, 自己免疫に関連した原因を見出せる症例があるのではないかと考え, 抗核抗体のスクリーニングを施行した. 対象は, 男性不妊, 染色体異常, 子宮奇形など明らかな病因のある症例や, SLEの診断基準を満たす症例を除外した116症例とした. 不育を主訴とした症例については, 流産又は死産を連続3回以上繰り返したA群 (n=23), 連続2回流産を繰り返したB群 (n=21) の2群に分類し, また不妊を主訴とした症例については, 1回流産のみでほかに妊娠歴のないC群 (n=10) と分娩経験があるD群 (n=12), 原発不妊であるE群 (n=50) の3群に分類した. 対照群は18~46歳の健常婦人 (n=54) とした. 血清中の抗核抗体価を間接螢光抗体法 (MBL社kit) にて測定し, 20倍以上を陽性とした. 抗核抗体の陽性率は, A群43.5%, B群38.1%, C群30.0%, D群16.7%, E群22.0%, 対照群22.4%であり, A群は対照群に比して有意に高値であつた (p<0.1). また30症例, のべ35回の既往分娩があり, 妊娠中毒症の発生率は抗核抗体陽性群では41.7%, 陰性群では4.3%で, 抗核抗体陽性群で有意に高率であつた (p<0.05). 早期産の発生率も抗核抗体陽性群で41.7%, 陰性群で8.7%で, 抗核抗体陽性群で高値の傾向がみられた (p<0.1). 35週以降の分娩例における出生体重は抗核抗体陽性群で2,976g, 抗核抗体陰性群では3,122gであつた. 抗核抗体陽性者では妊娠維持を妨げる免疫学的な機序が不育症の原因となつていることが示唆される. また原発不妊症例中に, 比較的抗核抗体価の高い症例が含まれており, これら一部の不妊症例に免疫学的機序が関与している可能性がある. これらの症例の抽出には抗核抗体のスクリーニングが簡便かつ有効である.

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