抗癌剤の腹腔内投与によるマウス卵巣卵細胞破壊・毒性の定量的研究

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  • Quantitative Evaluation for Murine Oocyte Toxicity Following Intraperitoneal Treatment with Chemotherapeutic Agents

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抄録

純系マウスC57BL/6の腹腔内に,出生後6週と7週の2回抗癌剤を投与し, 9週齢でsacrifice して卵巣を摘出した. 厚さ4μの連続切片を作成し, 原始卵細胞(小卵細胞)数を算定し, 生食液投与群に対する小卵細胞遣残率を求めた. 50%の卵細胞破壊量(ED50)は,RNA生合成を抑制するdoxorubicin(ADM), actinomycinD(ACD)が最小で, 酵素や蛋白質を障害するmethotrexate (MTX), vinblastine (VLB), etoposide (Et)が最大であつた. DNAを障害する抗癌剤では, 非特異的な部位で作用するpeplomycin (PEP), bleomycin (BLM), mitomycin (MMC), cisplatin (CDDP)が, 特異的な部位を障害するcyclophos-phamide (CPM), ifosphamide (IFO), Huorouracil (5FU)よりED50が有意に小さく毒性が強かつた. 抗癌剤をヒトに応用する場合の卵細胞毒性は,各抗癌剤の1回常用投与量(HUD)に対するED50の倍率で推察した. ED50/HUDは, ADM, CPM, CDDPが最小群で, 卵巣癌治療で繁用される3種の抗癌剤が最も強い毒性を示した. しかし,絨毛性腫瘍に対して用いられるMTX, ACD, EtのED50/HUDは大きく, 卵細胞毒性は弱かつたので, 卵細胞毒性と抗腫瘍性は必ずしも一致するわけではない. 卵巣温存手術後の若年婦人の化学療法については, 抗腫瘍効果が強く, しかも卵細胞毒性の少ない抗癌剤の選択が望まれる.

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