外陰Paget病11例の臨床病理学的検討

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  • A Clinicopathological Study of 11 Patients with Paget's Disease of Vulva

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抄録

外陰部に発生したPaget病11例について臨床病理学的検討を加え以下の結果を得た.1.昭和46年以来過去13年間に当教室で治療された外陰部Paget病は9例で,外陰癌(扁平上皮癌)の14例に対し,1:1.56の比であった.2.年齢は,61歳から75歳(平均67.8歳)の高齢者であった.また体表癌で診断の行ない易い部位に発生しながら,自覚症状出現から診断までに平均3.5年を要し,積極的な生検による早期診断が望まれた症例がみられた.3.根治的手術療法は10例に施行され,単純外陰摘除術3例,広汎外陰摘除術7例(直腸切断術=Miles手術及び人工肛門造設術併用2例,skin graft3例)であった.1例は,遠隔転移により試験開腹に終った.鼠径リンパ節転移は,9例中2例に認めた.4.組織学的検査で表皮内限局例は3例に過ぎず,真皮への直接浸潤5例,下床癌3例,汗管内in situ癌1例,扁平上皮癌合併1例であった.また肉眼的に十分病巣を切除したと考えられたにもかかわらず,摘出物の病理組織学的検査では9例中7例が切除端にまで病変が及び,予想以上の進展が認められた.5.PAS,PAS消化,Alcianblue, Mucicarmin, Aldehydefuchsin, DOPA, Carcinoembryonicantigen (CEA)の各組織化学的検査で,Paget細胞内にmucopolysaccharideの存在を確認した.そして,表皮内病巣,下床癌,転移病巣で同様な染色態度を示した.またCEAは,正常な表皮基底層にも染色された.6.下床浸潤癌の認められない症例は予後良好で,8例中2例に局所再発を認めたに過ぎなかった.一方下床癌例は,3例全例が全身転移で死亡した.以上よりPaget病の組織発生は,多中心が想定されるので,単に前癌病変ととらえるよりむしろ粘液癌と考え,慎重に取り扱うべきである.

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