本州沖黒潮流軸部に生息する現生浮遊性有孔虫の深度分布とその季節変化

書誌事項

タイトル別名
  • Seasonal changes of the vertical distribution of living planktic foraminifera at the main axis of the Kuroshio off Honshu, Japan
  • ホンシュウオキ クロシオリュウジクブ ニ セイソク スル ゲンセイ フユウセイユウコウチュウ ノ シンド ブンプ ト ソノ キセツ ヘンカ

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抄録

本州南方の黒潮流軸部に生息する浮遊性有孔虫の種構成と現存量およびその深度分布についての季節的変化について調査した結果, 以下のことが明らかになった.1) 黒潮流軸部における浮遊性有孔虫の現存量と種構成には, 季節的変化が認められ, 現存量が多く顕著な季節変化を示す種として7種が挙げられる : Globigerinoides sacculiferは9月に, Neogloboquadrina dutertreiとPulleniatina obliquiloculataは12月に, Globorotalia inflata, Globorotalia hirsutaおよびGloborotalia truncatulinoidesは3月に, そしてGloborotalia menardiiは5月に卓越している.黒潮流軸部での季節的変化の要因の一つには季節躍層が発達する時期と鉛直混合が活発化する時期とによって生ずる海水温と海洋構造の鉛直的変化があり, 海水温の鉛直分布や水塊構造から, 季節躍層発達期, 季節躍層衰退期, 季節躍層消滅期, 季節躍層形成期の4つに区分される.これら7種のうち, 季節躍層が顕著に発達する9月にはGlobigerinoides sacculiferが季節躍層以浅で現存量が多い.季節躍層衰退期の12月にはNeogloboquadrina dutertreiとPulleniatina obliquiloculataが季節躍層付近で現存量が多く, 一方, Globorotalia inflataは躍層よりも深い深度で現存量の極大を示す.さらに, 鉛直混合が活発化する季節躍層消滅期には, Globorotalia inflataは鉛直混合層内で現存量が多く, Globorotalia hirsutaとGloborotalia truncatulinoidesは鉛直混合層よりも深い深度で現存量の極大を示す.季節躍層形成期の5月にはGloborotalia menardiiが, 季節躍層付近で現存量が多い.2) Globigerinella aequilateralisとHastigerina pelagicaは季節躍層の発達する時期には躍層付近で現存量の極大を示し, 鉛直混合の活発な時期には水深0m付近で極大を示し, 結果的に年間を通して現存量を保っており, 顕著な季節変化が認められなかった.3)Globorotalia inflataおよびG. truncatulinoidesは, Bradshaw(1959)によってCentral-water assemblageの代表種とされ, 黒潮域を特徴づけるとされたEquatorial west-Central assemblageの25種のなかには含まれていないが, 季節躍層衰退期から季節躍層消滅期にかけて黒潮流軸部にまで分布を拡げていることが明白になった.以上述べたように, 季節変化の著しい中緯度海域では, 各海域(例えば沿岸域, 黒潮流軸域, 外洋域など)の浮遊性有孔虫の種構成や現存量の季節変化を考慮して多数の深度層から系統的なプランクトンネットによる採集に基づく調査が必要である.また, 今回の調査で使用したプランクトンネットは330μmの網目を用いたが, 今後, 各種の生活環などの課題を解決するためには, 各海域での定点における採集期間の問題や使用するネットの網目をより細かなものにするなどして, 年間または季節を通じた系統的な試料採集が必要であると考えている.

収録刊行物

  • 化石

    化石 70 (0), 1-17, 2001

    日本古生物学会

被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (13)*注記

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