Poland症候群 : 45症例の臨床・X線学的研究

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  • Poland's Syndrome. Clinico-Roentgenographic Study on 45 Cases

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抄録

1841年,Polandは合指症,中節骨欠損,同側の大胸筋および小胸筋欠損ならびに外斜筋および前鋸筋の形成不全を示す死体標本をはじめて記載した.この片側の指の合指症と同側の大胸筋胸肋部欠損を伴なう複合奇形は最近, Poland's syndrome, Poland's anomaly, Poland's syndactylyとして知られるようになったが,この症候群の定義は今なお漠然としており明確ではない.定義著者は以前のPoland症候群の記述文献および自験症例を詳細に検討して,この症候群のより正確な定義付けと分類を行なった.すなわちPoland症候群とは,1)片側性の示指,中指,環指の中節骨短縮(あるいは時に更に高度の手部減形成奇形),2)これら罹患指間の皮膚性合指(symbrachydactyly),3)中等度の短小手,ならびに4)同側の大胸筋胸肋部の欠損によって特徴づけられるものである.症例1956年より1975年の20年間に名大整形外科外来において,前述の定義を満足させる45症例のPoland症候群が観察された.男子34例,女子11例で男子に多く認められ,右側罹患は30例,左側罹患は15例で右側に多く認められた.すべての症例は散発例であり,両親の近親婚は認められなかった.著者はこれらの症例を手部奇形の重症度に従って以下の4つの臨床的・X線学的typeに分類した.1)中節骨短縮性3指節型Brachymesophalangeal triphalangy type.このtypeでは示指,中指および環指の中節骨の軽度あるいは中等度の短縮のみが認められ,正常の3指節機能を示した.男子10例,女子4例に認められ,今回の症例の31.1%がこの範濤に属した.10例は右側に,4例は左側に認められた.2)2指節型Diphalangy type.このtypeでは示指,中指および環指の中節骨の短縮がきわめて高度のため,小児期においては当該中節骨が末節骨の骨端核形状を呈し,癒合2節性指assimilatin diphalangyを示した.罹患指の遠位指関節は伸展位で強直を示した.男子17例女子6例に観察され,今回の症例の51.1%がこの範疇に属した.14症例は右側に,9症例は左側に観察された.3)単指節型Monophalangy type.示指および中指の短縮がきわめて高度となったため,これら指の残存指節は単指節型を示したものである.このtypeは男子4例に認められ,3例は右側に,1例は左側に観察された.4)欠指型Ectrodactyly type.この範疇の軽症型では独立した爪を有する短縮した母指および小指がそれぞれ内,外側に残存した.重症型では全指が痕跡的となり前腕は高度短縮を示した.このtypeは男子3例,女子1例に認められ,3例は右側に,1例は左側に観察された.胸壁の異常:同側の大胸筋の胸肋部欠損は全例に認められたが,患側扁関節の運動範囲および筋力は常にまったく正常に保たれていた.総括Poland症候群の正確な定義を確立し,自験45症例を手部変化の重症度に従って4つのtypeに分類し,臨床的ならびにX線学的所見を詳細に報告した.比較検討するのに充分なdataを含む82例を文献上より探索した.罹患男子対女子の比率は58:24で男子に多く,右側対左側の比は52:30で右側に多く認められ,自験例と同じ傾向が観察された.

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