個体間相互作用に基づく創発的ダイナミクスに関するエージェントベースモデリング(創発システム)(<特集>人工知能分野における博士論文)

DOI
  • 鈴木 麗璽
    名古屋大学大学院人間情報学研究科物質・生命情報学専攻 (現)名古屋大学大学院情報科学研究科複雑系科学専攻創発システム論講座

この論文をさがす

抄録

<p>個体間の相互作用によって大域的な挙動や構造が生じる創発的現象の解明は,複雑系科学における中心的なトピックである.本論文は,創発的現象の普遍的な性質を明らかにすることを目的とした,次の三つのテーマに関する具体的状況設定に基づくエージェントベースモデリングによる実験と解析をまとめたものである.はじめに,系を駆動する複数の適応プロセス間の相互作用に関する具体的状況設定として,動的環境における進化と学習の相互作用を取り上げ,表現型可塑性の進化を導入した繰返し囚人のジレンマゲームの戦略の進化モデルを構築した.実験の結果,いったん学習に依存した協調集団へと進化した後,学習によるコストにより必要最小限の学習に依存した協調集団へと進化するBaldwin効果と呼ばれる現象が確認され,両プロセスは協調行動の創発に対して協調的に働くことが示された.次に,相互作用の構造が集団の挙動に与える影響に関して,社会的集団における局所的な相互作用がもたらす協調行動の創発に焦点を当て,空間的局所性を導入したN人版繰返し囚人のジレンマゲームの戦略の進化モデルを構築した.特に,ゲームを行う際に生じる局所性が戦略の一部として進化する実験において,局所性の進化は進化なしの場合と比べ協調行動を促進し,相互作用の構造自体が変化する仕組みが系をより適応的な状態へと導くことが明らかになった.最後に,異なるレベルで生じる多様性間の相互作用に関する状況設定として,イベント会場における混雑情報提供を取り上げ,複数の施設を来場者が混雑情報に基づいて観賞してまわるマルチエージェントモデルを構築した.実験の結果,混雑情報の提供は来場者の行動の多様性を増加させるが,その副次的効果である時間経過に伴う将来の行動の多様性の減少によって,突発的に長い順番待ちの行列が発生するという,情報と行動の多様性間の動的な相互作用のシナリオが示された.</p>

収録刊行物

  • 人工知能

    人工知能 19 (1), 102_2-102_2, 2004-01-01

    一般社団法人 人工知能学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390285697603108352
  • NII論文ID
    110002809159
  • NII書誌ID
    AN10067140
  • DOI
    10.11517/jjsai.19.1_102_2
  • ISSN
    24358614
    21882266
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ