マツノザイセンチュウの生活環に関連する糸状菌 (I)

書誌事項

タイトル別名
  • Fungi Associated with <i>Bursaphelenchus lignicolus</i>, the Pine Wood Nematode (I)
  • マツノザイセンチュウの生活環に関連する糸状菌-1-(「マツ類の材線虫防除に関する研究」の一部)
  • マツノザイセンチュウ ノ セイカツカン ニ カンレン スル シジョウキン 1 マツルイ ノ ザイ センチュウ ボウジョ ニ カンスル ケンキュウ ノ イチブ

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抄録

マツノザイセンチュウの生活環の中で,糸状菌のかかわり合う程度とその役割を明らかにするため,幾つかの分離・培養実験を行った。えられた結果は次のとおりである。<br> 1) マツノザイセンチュウがマツ樹冠の後食枝に侵入してから翌春マツノマダラカミキリによって運び出されるまでの間の,いろいろな時期に検出される糸状菌相には,それぞれ特徴が認められた。<br> 2) マツノザイセンチュウの侵入場所である健全木樹冠の枝の後食部では, Ceratocystis, Pest-alotia, Alternaria, Cladosporizsm, Rhizosphaera, Colletotrichum が主として検出され,針葉に葉枯性の病気を起す菌類がかなりの頻度を占めることと 3) 4) で高い検出率を示す Verticicladiella が全く検出されないことが特徴的である。<br> 3) マッが枯れたあと線虫の生息場所である幹の材中では, RhizosphaeraColletotrichaim 等の葉枯性病菌は検出されず, Ceratocystis, Pestalotia, Alternaraa に加えて Verticicladiella, Diplodia, Fusarium が主な糸状菌となる。また TrichodermaPenicillium による汚染もかなり認められる。<br> 4) マツノザイセンチュウが集中してくるマツノマダラカミキリ蛹室壁面からは, Ceratocystis, Veyticicladiella が主として検出され,とくに前者は蛹室壁の表面に多量の子のう殻を形成,しばしば黒色じゅうたん状を呈する。カミキリ幼虫の不在の孔道や蠕塞では Tyichoderma の汚染の多い傾向がある。<br> 5) 線虫の伝播者である羽化脱出したカミキリ成虫体からは, Ceratocystis, Altermzaria, Pestalotia, Diplodia が主として検出され,とくにCeratocystis はマツノザイセンチュウと同様に,もっぱらこのカミキリによってマツからマツへと伝播されるものと思われる。<br> 6) これらの各種糸状菌のうち, Diplodia, Pestatotia, Ceratocystis, Verticicladiella, Fusarium の菌そう上で,線虫は菌糸を食餌として良く増殖する。これに反して, Trichoderma, Cephalospoyiasm, Alternaria の菌そう上では,線虫は全くあるいはほとんど増殖せず,これらの菌糸を餌として利用できない。<br> 7) マツの材組織を円板あるいはおが屑にして殺菌し線虫を接種したが線虫は全く増殖できなかった。<br> これらの実験結果から,マツが樹脂浸禺の停止を起してからの樹体内におけるマツノザイセンチュウの増殖に際しては,樹体内にまん延繁殖した糸状菌を食餌として利用しているものと推測される。Ceratocystis, Pestalotia, Diplodia, Verticicladiella, Fusarium等が線虫の増殖に好適な糸状菌であり,線虫は材中でこれらの菌類を選択することなく餌として利用するのであろう。逆に TrichodermaCephalosporizam が優占した材申では,線虫の増殖はほとんど行われないものと考えられる。

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