「時を超えて生きる―休眠のメカニズムとその応用―」キリギリス科昆虫の卵休眠・長期休眠現象に着目して―

  • 檜垣 守男
    農業·生物系特定産業技術研究機構果樹研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Prolonged egg diapause in <I>Eobiana japonica</I>
  • キリギリス科昆虫の卵休眠--長期休眠現象に着目して
  • キリギリスカ コンチュウ ノ ラン キュウミン チョウキ キュウミン ゲンショウ ニ チャクモク シテ

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抄録

キリギリス科昆虫の一種イブキヒメギス(イブキ)は,本州中部以北,特に高地に多く生息する。本種は,胚発育中に初期胚で起こる初期休眠と成熟胚で起こる最終休眠の 2 つの休眠を経験する。それぞれの休眠期で越冬してから孵化する 2 年 1 化の生活史を基本とするが,初期休眠の長期休眠性により,孵化までに 2 - 4年を要する卵が混在する。初期休眠の生態的意義を探るため,本種と,最終休眠のみを持ち,主に低地に生息する年 1 化のヒメギス(ヒメ)の生活史を比較した。弘前では,ヒメの産卵は 7 月下旬に始まり,短期間に集中的に行われた。8月下旬以降に産下された卵は最終休眠期に到達できず,翌春の孵化が大きく遅れた。一方,イブキの産卵は 8 月上旬に始まり,秋遅くまで続いた。産卵期の早晩は 2 年後の孵化期に影響しなかった。高地のイブキの孵化, 羽化期は平地の系統より遅く,特に羽化期は年によって大きく変動した。ヒメギ類は幼虫発育に高温を必要とするため,高地のイブキは,冷夏や日照不足によって深刻な影響を受けると考えられた。以上より,イブキは初期休眠を持つことによって,発育季節が短く,不安定な地域での生活を可能にしていると考えられる。

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参考文献 (13)*注記

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