浅間火山1108年(天仁)活動噴出物のフッ素,塩素含有量

  • 吉田 稔
    Department of Chemistry, Faculty of Science, Tokyo Institute of Technology
  • 青柳 隆二
    Department of Chemistry, Faculty of Science, Tokyo Institute of Technology

書誌事項

タイトル別名
  • Fluorine and Chlorine Contents in the Products of the 1108 (Tennin) Eruption of Asama Volcano

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抄録

浅間山天仁活動は,スコリア(軽石)の噴出に始まり,中間型の追分火砕流の発生を経て,上の舞台溶岩流の流出で終わった.天明活動の鎌原火砕流に相当する噴出物は,天仁噴火では知られていない.これらの噴出物は,同一火口から生じ,いずれも安山岩質で,主成分組成の分布範囲は狭い.著者らは,吉田・土屋(2004)が,天明(1783)活動噴出物につき得た結果と同じく,噴出様式の変化は,噴出時のマグマからのがス放出状況の相違がもたらしたものと考え,各種噴出物中のフッ素,塩素を定量し,これらの成分の揮発に開する吉田の実験結果に基づいて噴出機構を考察した.スコリア試料は,均一で高い塩素含有量を示し,噴火開始時に,マグマ柱の最上部に揮発性成分が濃縮され,火道内部で発泡して激しく放出されるとともに急冷されたとして説明される.追分火砕流試料は,フッ素,塩素含有量の分布範囲が非常に広く,かなりの数の試料がスコリアとほぼ同じ含有量を示す.一方,その他の試料は,フッ素,塩素含有量とも低く,変動幅が著しく大きい.ハロゲン含有量の地理的分布を検討した結果,追分火砕流は,ハロゲン含有量の異なる多くのフローユニットから成るものと見られる.ハロゲンの多いフローユニットは,火口付近に堆積したスコリアが流れ下ったものと推測される.ハロゲンの少ないフローユニットは,天明活動の吾妻火砕流と同様,火口付近で発泡しながら流出したことを示唆する.一方,ハロゲン分量の地理的分布を見ると流出後の脱ガスは主に流下の初期に起きたと思われる.上の舞台溶岩は流出後のガスの放出は少なかったと見られる.これらの結果は,天明噴火噴出物につき得られた結果と調和する.

収録刊行物

  • 火山

    火山 49 (4), 189-199, 2004

    特定非営利活動法人 日本火山学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (21)*注記

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