尿管の流体力学的抵抗に関する研究

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  • AN HYDRODYNAMIC STUDY ON THE URETERAL RESISTENCE

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抄録

最近, 上部尿路の閉塞を知る手段として, Whitakar による Pressure Flow Study が行なわれるようになって来た. 上部尿路は大きく腎盂と尿管から成り, 腎盂がある一定の内腔を有するのに対し, 尿管は1本の管であり, 両者の流体力学的特性は当然異なると考えなければならない. そこで Pressure Flow Study を理解するための基礎的検討として, 尿管内に一定量の生理食塩水を流した場合の尿管の抵抗を測定した. 8頭の成犬を用い, 5Fr. ポリエチレンカテーテルを腎瘻の要領で腎盂尿管移行部まで挿入しハーバード社注入器で0.43, 1.08, 2.16, 5.40, 10.80ml/minの注入量で尿管内に生理食塩水を持続注入した時の尿管内圧を記録して, 尿管抵抗を評価した. またノルアドレナリン, アセチルコリンを投与して尿管蠕動が頻発した状態においても検討した. 尿管蠕動が発生していない状態の犬尿管全長の抵抗値は, 5Fr. 40cmのポリエチレンカテーテルの抵抗値とほとんど同じ1.16~1.25cmH2O/ml/minであった. しかし, ノルアドレナリン, アセチルコリンを投与して尿管蠕動を発生させると, 尿管内流量の多少によって尿管抵抗値は著明に変化した. 即ち2.16ml/min程度の流量まで, すなわち尿管が bolus を作って閉じている状態では尿管抵抗は著明に高く, 尿管蠕動の果たす役割が重要と思われた. しかし, 尿管内流量が5.4ml/min以上で, 尿管が円柱となって尿が輪送される状態では, 尿管蠕動が頻発していても, 尿管抵抗値は蠕動の発生していないコントロールの状態とほぼ同じで, この場合は尿管の壁の tonus が尿管抵抗値を決定すると考えられた. 即ち, ノルアドレナリン投与時はコントロールよりほんの少し抵抗は高く, アセチルコリン投与時はコントロールよりむしろ抵抗は低いことが判明した. これらの結果から, Whitaker が提唱している毎分10mlで注入する Pressure Flow Study の判定においては尿管蠕動の有無は考慮に入れる必要がないと思われた.

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