膀胱癌の術前 one-shot 動注療法. I. 薬剤選択に関する基礎的検討

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  • PREOPERATIVE ONE-SHOT INTRAARTERIAL INFUSION CHEMOTHERAPY FOR BLADDER CANCER : 1. Experimental Studies for the Selection of Drugs

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抄録

膀胱癌に対する手術療法の予後を改善するための補助療法の1つに術前動注療法がある.本療法は鈴木らがはじめて治療に応用し,臨床的に有用であると報告して以来,最近多くの施設で施行されはじめている.しかし動注に用いる薬剤の選択に関しては,充分な検討がなされていない.そこで,本療法の有用性を向上させる目的で薬剤選択のための基礎的実験を施行した.膀胱癌に有効とされる3剤,thiotepa(thio-TEPA)(7mg/kg),doxorubicin hydrochloride(ADM)(10mg/kg)およびcisplatin(CDDP)(5mg/kg)を各々単独で雑種成犬の総腸骨動脈内または橈側皮静脈に注入し,1時間後の膀胱(粘膜,筋層),回腸(粘膜,筋層),腎,肝および血清の薬剤濃度を測定した.thio-TEPAはNBP法,ADMは蛍光分析法,CDDPは原子吸光法により測定を行った.thio-TEPAでは動注群,静江群間に組織内濃度差は認められなかった.ADMは静注群に比較し動注群において,膀胱粘膜および筋層の有意な高濃度と回腸粘膜,腎,血清の低濃度が観察された.CDDPでは静注群に比較し,動注群で,膀胱粘膜の有意な高濃度と腎および血清の低濃度が認められた.またADMとCDDPでは膀胱筋層に比較し粘膜に高濃度を認めたが,thio-TEPAは膀胱粘膜,筋層間に組織内濃度差を認めなかった.以上より膀胱癌のone-shot動注療法に使用する薬剤としてADMおよびCDDPが適しており,thio-TEPAは不適であることが示唆された.

収録刊行物

  • 日泌尿会誌

    日泌尿会誌 77 901-908, 1986

    社団法人日本泌尿器科学会

被引用文献 (3)*注記

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