膀胱腫瘍における malignant potential の指標としての ABH isoantigen. PAP 法による染色パターンに基づく判定基準の作成ならびに CEA, Fibronectin との関連性

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  • ISOANTIGENS ABH IN BLADDER TUMORS AS AN INDICATOR OF MALIGNANT POTENTIAL : Criteia for the Loss of BGA Based on the Staining Pattern by PAP Method and its Correlation with CEA and Fibronectin

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抄録

膀胱腫瘍における血液型抗原(BGA)の消失の有無は腫瘍のmalignant potentialの指標として重要であることが近年明らかにされてきた.今回は,PAP法を用いて,表在性腫瘍86例を含む129例の膀胱腫瘍を対象としBGAを検出しその染色のパターン分類を行った.さらにBGA消失についての臨床応用可能な判定基準の作成を目的として各染色パターンと表在性腫瘍の予後との関係について検討を行った.さらに他のマーカーとしてcarcinoembryonic antigen(CEA),fibronectin(FN)を同一の組織においてPAP法にて検出しその組織内分布とmalignant potentialの指標としての有用性ならびにBGA消失との関連性について検討を加えた.その結果BGAの染色のパターンは,typeI,II,III-a,III-b,IVに分類可能であったが各typeと腫瘍の組織学的異型度との間には明らかな相関関係は認められなかった.CEAの陽性率は129例全体では10.1%,表在性腫瘍で11.6%であり,組織学的異型度との関係では,G3においてやや高い陽性率を示した.FNの陰性率は全体で22.6%であり,stageの上昇とともに陰性率は増加しており,組織学的深達度との相関が認められた.表在性腫瘍86例中再発を来したのは50例(58.1%)であり,再発時に筋層を越える浸潤癌に進展または転移を生じた症例を10例認めた.この10例はtypeIII-bもしくはtypeIVに属しておりBGA消失の判定基準としてtypeI,IIを陽性,typeIII-aを疑陽性(経過観察),typeIII-b,IVを陰性とするのが今回の成績より適切であると考えられた.また,CEA,FN単独ではmalignant potentialの指標としてはBGAに劣るものと考えられた.さらに,BGAとCEAもしくはFNを組み合わせることの有用性も特に認められなかった.

収録刊行物

  • 日泌尿会誌

    日泌尿会誌 77 977-987, 1986

    社団法人日本泌尿器科学会

被引用文献 (1)*注記

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