製錬所における硫酸曝露による歯牙酸蝕症の有所見者割合

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タイトル別名
  • Prevalence of Dental Erosion Caused by Sulfuric Acid Fumes in a Smelter in Japan
  • セイレンショ ニ オケル リュウサン バクロ ニ ヨル シガサンショクショウ ノ ユウショケンシャ ワリアイ

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抄録

1996年に酸使用職場のある一企業の男性従業員350人を対象に歯牙酸蝕症の有無を検査したところ, 28人 (8.0%) に酸蝕症所見が認められた. 所見はすべて日本歯科医師会の歯牙酸蝕症診断基準の第1度に相当し, 歯牙表面の光沢消失と皿状欠損のみであった. 28人中光沢消失は20人, 皿状欠損は11人に認められたが, 皿状欠損と光沢消失の両方を示した者は3人だけであり, 皿状欠損には光沢消失が必発ではなかった. 有所見者とそれ以外の2群について, 関連要因を比較したところ, 硫酸ミストの曝露が考えられる電解部門の現職もしくは1年以上の職歴を有する者が有所見者に有意に多かった (35.7% vs 13.7%, p < 0.01). そのほかの要因として, 酸蝕症有所見者では年齢が高かったが, う蝕歯数, 歯牙清掃習慣, 甘味飲料や酸味食品の嗜好や摂取には差がないか, むしろ低めであり, 今回観察された歯牙酸蝕症所見は, 職業性要因が主な原因となっていたものと推定された. 調査時には電解群54人中10人 (18.5%) が有所見者であり, 酸曝露のない対照職場 (160人中10人, 6.3%) と比較すると, 酸蝕症有所見割合のリスク比は3.0 (95%CI : 1.3〜6.7) になっていた. 今回の結果は, 酸使用職場では, 軽度ではあっても歯牙酸蝕症有所見者が現在もなお存在する可能性を示している. 現在の曝露環境が新たな歯牙酸蝕症を起こしうるか否かについてはさらに詳しく評価する必要がある.

収録刊行物

  • 産業衛生学雑誌

    産業衛生学雑誌 41 (4), 88-94, 1999

    公益社団法人 日本産業衛生学会

被引用文献 (5)*注記

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参考文献 (34)*注記

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