小型先天性色素性母斑の母斑性色素細胞の真皮内分布像と年齢的変化の検討

この論文をさがす

抄録

近年,我々は小型先天性色素性母斑(大きさ30×30mm以下)の治療としてQスイッチルビーレーザーと脱毛レーザーによる併用療法を行い非常に良い結果を得たケースを経験している.しかし,全例良い成績が得られるわけではなく,治療方法のよりよい改良が必要でその為には小型先天性色素性母斑の病理組織像と経年的変化についてのより詳細な検討が必要である.そこで,我々は近畿大学医学部皮膚科で切除手術をした小型先天性色素性母斑98例の母斑性色素細胞の真皮内分布像とその経年的変化についてHE染色,S-100タンパク染色およびマッソンフォンタナメラニン染色標本を用いて検討し,併せて,巨大型および中型の大きさの先天性色素性母斑の組織と比較検討した.その結果,母斑細胞(NPC)の浸潤範囲はi)真皮乳頭層内から網状層上層(1型),ii)真皮網状層上層から網状層中層まで(2型),iii)真皮網状層最下層から脂肪組織内まで(3型)の3型に分けられ,浸潤様式はi)汗管・毛包に沿った浸潤(a型),ii)びまん性に浸潤(b型)の2型に分けられた.全体像と顔面,躯幹,四肢の部位別の母斑細胞の真皮内分布における経年的変化は小型の母斑の場合でも,巨大型と同じく1歳未満ですでにNPCは真皮中層から深層(3b型)に波及し,部位別による検討でも,四肢,躯幹でも同様の傾向が認められた.顔面では1歳以下では1型の割合が比較的高く,6歳以上では1型は認められず後天性色素性母斑の経年的発達に類似性が認められた.小型ではメラニン色素はどのタイプでも真皮乳頭層の細胞しか認められなかったが,中〜巨大型では皮下脂肪組織の葉間結合織に存在するNPCがあり,それらがメラニンを産生している像が認められた.これらの検討した結果を臨床に応用すると,治療には顔面の小型先天性色素性母斑の場合,幼児期までは1型や2型が多く成人になるにしたがい3型と変化するため,出生後出来るだけ早期にレーザー治療を行うことによってメラニン産生NPCを破壊すれば色素の増加を抑制出来て,色調を正常化出来る可能性があり,またNPCが真皮へ進入増殖するのを防止出来る可能性があることが示唆された.即ち,1歳未満の先天性色素性母斑は早期のレーザー治療が望ましいと云える.躯幹,四肢の場合でもメラニン色素を除く目的であればレーザー治療が望ましいが,1歳未満に急いでレーザー治療する必要はないことが明らかとなった.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ