ベンチャー企業の創生をめぐる国際比較分析 : 制度研究と担い手研究の統合をめざして

書誌事項

タイトル別名
  • Comparative Analysis of the Emergence of New Business : Attempt to Integrate the Institutional Approach and the Social Construction Approach

この論文をさがす

抄録

経営環境の国際比較は、構造や制度に焦点をあてた比較制度分析と、企業家に焦点をあてた担い手の分析の2つのアプローチから、それぞれ行われてきた。本稿では、その2つを、主に社会学における研究をもとに統合した新しい理論的枠組みの可能性について、検討するものである。具体的な比較分析の対象として、ベンチャー企業の誕生と創生をめぐる国際的な格差をとりあげることにする。近年、ベンチャー型企業の起業活動の国際的な格差の大きさは、定量的に明らかにされてきた。例えば2004年に発表されたバブソン大学とロンドン・ビジネススクールによるグローバル・アントレナーシップ・モニター(GEM)の調査によれば、日本はG7諸国の中で最も起業や新事業創造が起こりにくい国だという。その背景には、何があるのか。そして特に日本の経済やビジネスの活性化の文脈で、日本社会の何が変わり、政府がどのような方策をとり、日本人がどのような個人的資質を獲得すれば、アントレナープレナーシップに満ちたベンチャー企業や新事業の創造が増えるのだろうか。このような問題提起に対して、従来から、起業の担い手(エージェント)と、それを包摂する構造(ストラクチャー)の相関関係についての2つの立場から、仮説が提起されてきた。一つが、各国の政治・経済・社会構造が、起業家精神の醸成と実践に第一義的に関わっているという立場であり、もう一つが、起業や新事業創造の担い手個人の資質や、効用やリスクに対する個人的な受け止め方、選好が重要な要因であるとする立場である。本研究では、利害や選好を社会の営みの中で構築された(Socially Constructed)「意味の体系」のなかで考察しようとする分析手法の応用を試みる中から、この二つの立場を統合し、一貫した理論枠組みを提示し、その上で、日本経済についての洞察を導きたいと考える。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ