眼窩領域に発生するB細胞性悪性リンパ腫におけるTCL1遺伝子発現の検討

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  • Expression of TCL1 oncogene in Orbital B cell lymphoma

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抄録

TCL1遺伝子は急性T細胞性白血病やT細胞性悪性リンパ腫の中で14q32.1領域に染色体転座を持つタイプで高率にその発現が見られる遺伝子で、114個のアミノ酸をコードし, 主に細胞質内のミクロゾーム分画に14KDの蛋白として認められる。TCL1遺伝子は, 正常組織ではT細胞やB細胞の分化・成熟段階で発現が知られ, その発現の亢進は白血病化に深い関わりを持つと考えられが, 遺伝子機能については殆ど知られていない。今回, 我々は眼窩領域に発生したB細胞性悪性リンパ腫の臨床・病理学的な特徴の一端を明らかにするため, TCL1蛋白に対するラビット抗血清を作成し, 免疫組織染色を行うことにより, TCL1蛋白発現の検討を行った。TCL1蛋白は, 正常リンパ節では二次濾胞周囲のマントル層領域の小型リンパ球に高い発現を認めた。B細胞性リンパ腫では低悪性度群 (MALT型・濾胞性・リンパ形質細胞型・びまん性小細胞型) の内, 眼窩領域では90%, 眼窩領域外では68%と高頻度に認められ, 高悪性度群である眼窩領域外のびまん性大細胞性リンパ腫では17%と, 殆ど発現を認めなかった。異型度の強い腫瘍性B細胞よりむしろ異型度の低いB細胞, 特にMALTリンパ腫細胞で高い発現が認められたことからTCL1遺伝子がB細胞性リンパ腫の増殖や分化に関与している可能性が強く示唆された。

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