アドニス園について

  • 金 龍沫
    Laboratory of Landscape Architecture, Uni. of Kyoto

書誌事項

タイトル別名
  • THE GARDEN OF ADONIS
  • アドニス園について〔英文〕
  • アドニスエン ニ ツイテ エイブン

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抄録

古代ギリシャでは, アテネでアドニス祝祭が女性により壮厳に行なわれた。それが, いまもギリシャの所々でアドニス・ガーデンの風習として生き続け, とくにセェレェー村では復活祭にこの行事が盛んである。<BR>本研究は, アドニス庭の形成と推移を歴史的に考察し, 現代のギリシャ庭園に及ぼした影響を検討したものである。<BR>文献によればアドニス祝祭は紀元前5世記に遡る。美男アドニス神の若い逝去を悼んで, 若い女性らが, こわれたエムプラ (ギリシャの壺) を逆にして, なかに土を埋め草花を栽培した。草花の枯死はアドニス神の死と復活を象徴するもので, 植物の再生と成長を促進する呪術的な行為とされた。とくに注目すべきことは, こわれたエムプラの残りを逆さにして, それを鉢として使用した点である。<BR>この風習はギリシャ人の生活に深くしみ込み, 形こそ変わったが, いまでもいたるところでアドニス・ガーデンがみられるし, ポット・ガーデンのオリジンとみることもできる。<BR>なおアドニス・ガーデンは豪華な造園ではなく, 庶民の情緒的な小庭園であるところに, 大きな意味があると思われる。

収録刊行物

  • 造園雑誌

    造園雑誌 42 (3), 10-17, 1979-02-15

    社団法人 日本造園学会

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