日本の火山地帯における地熱資源調査 : レビュー

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  • Geothermal resources survey in the volcanic fields of Japan : A review
  • ニホン ノ カザン チタイ ニ オケル チネツ シゲン チョウサ レビュー

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抄録

昭和48年に勃発した第1次石油危機を契機に,我が国は太陽,風力,地熱等の石油代替エネルギー開発を国策として強力に押し進めてきた.地熱は我が国に豊富に賦存する国産エネルギーであり,発電にあたり炭酸ガス排出量が少ない環境に優しい再生可能エネルギーである.昭和48年以降,国及び企業による全国的規模での地熱資源調査が,特に北海道,東北,九州の火山地帯において組織的に展開された.その結果,多くの地熱開発有望地域が抽出され,あわせて地熱系と地熱貯留構造の解明が進んだ.その成果は地熱発電所の建設に結実し,日本は現在17地点,約533MWの発電量を有する世界第5位の地熱発電国となった.昭和55年以降,地質・地化学等の地表調査,物理探査,坑井調査等を駆使した全国的な地熱資源調査がNEDOにより実施され,火山地帯,特にカルデラや新期堆積物で覆われる火山地域の地質等に関する地球科学的データが飛躍的に増大した.濁川,砂子原,肘折のような小規模な第四紀カルデラ内は地熱開発有望地として早くから注目された.濁川カルデラ内では多数の地熱開発井が掘削された結果,急傾斜の壁を持つ小規模じょうご型の濁川型カルデラの存在が実証され,これがその後日本の典型的カルデラの一つに位置付けられた.一方,新第三紀中新世以降に生成した比較的規模の大きいかレデラ構造〜Volcano-tectonic depression(VTD)地域も地熱有望地域として注目され,八甲田,仙岩,栗駒,豊肥地域では坑井調査を含む詳細な地熱調査が実施された.その結果,これらの地域では沖浦,古玉川・先焼山,三途川,猪牟田等のカルデラ〜VTDの構造が明らかとなってきた.葛根田におけるNEDOの深部地熱調査井は,深度2,860mで第四紀花崗岩(葛根田花崗岩)に到達した.深度3,729mの坑底で金属テルル(融点449℃)が溶融したことから,最終平衡温度は500℃以上と見積もられ,この花崗岩が葛根田地域の現在の地熱系の熱源岩である可能性が指摘された.阿寒,秋田焼山,八丈,雲仙,霧島等の火山地域周辺で実施された地熱資源調査では,坑井掘削によりいずれも蒸気・熱水の噴出が認められ,活火山地域周辺が地熱地帯として有望であることが実証された.また,これらの坑井掘削により新期火山噴出物で覆われる地熱地帯の第三紀花崗岩類,先第三系の基盤地質構造等に関する有益な情報が数多く得られた.地熱貯留構造は当初石油に類似した帽岩を有する多孔質型貯留構造とされていたが,地熱開発調査が進行するにつれて,これらが複雑な断層・断裂からなる断裂型貯留構造であることが明確となってきた.最近運用を開始した柳津西山や大霧地熱発電所では,縦型の急傾斜断層が貯留層を構成する典型的な断裂型貯留構造である.温泉活動と金鉱床生成に密接な関係のあることが世界的に注目されて以来,豊肥等の地熱地域では金属鉱業事業団による温泉型金鉱床の探査活動が積極的に展開され,火山性陥没構造縁辺部の断裂中に数十グラム/トン程度の金を含有する鉱化作用が報告されている.

収録刊行物

  • 地球科学

    地球科学 53 (5), 325-339, 1999

    地学団体研究会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (130)*注記

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