絞扼性神経損傷モデルマウスに対する寒冷療法の試み

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抄録

【目的】疼痛は、患者の主訴として挙げられることが多い。神経因性疼痛を呈する患者では、理学療法施行が難渋するケースが多いため、近年、神経因性疼痛を発生前から防ぐことが大切であるといわれている。本研究では神経因性疼痛の動物モデルである絞扼性神経損傷(chronic constriction injury:以下CCI)モデルマウスに対して、炎症期の発痛物質の抑制などの効果があるとされるアイシングを行い、神経因性疼痛が軽減されるかについて検討した。<BR>【対象】対象はC57BL/6NCrj雄性マウス(32匹、8週齡)、アイシング実施したアイシング群(16匹)と、アイシングを実施しないコントロール群(16匹)に分けた。<BR>【方法】全対象に対してペントバルビタールナトリウム腹腔内注射による麻酔後、腰椎以下左後肢までの背側を剃毛し、皮膚を切開した。その後、鈍的に左坐骨神経を露出し5.0chromic gutにて坐骨神経に触れる程度の2重結紮を1mm間隔で3箇所に行った。結紮後、術部の皮膚を縫合した。なお、水および飼料の摂取は自由とした。アイシングは術直後、左後肢に対して実施した。アイシングは20分間を3回行い、各実施後は10分の間隔を置いた。疼痛評価として全対象に、術前および術後1、3日後に光熱刺激に対する逃避反応時間を測定した。逃避反応時間は照射開始から逃避反応出現までの時間とし、術側と非術側の平均の差をdifference score(以下D.S.)とした。統計処理として各内のD.S.の比較にはone way ANOVAを行った。また、群間の比較にはtwo way ANOVAを行い、その後2-tailed t-testを行った。なお、危険率は5%未満とした。<BR>【結果】コントロール群では術前に対して術後1、3日目のD.S.は有意に減少していた(P>0.01)。アイシング群において術前に対して術後1、3日目のD.S.に有意差は認められなかったが、術後1日目と比較して術後3日目ではD.S.が有意に減少していた。アイシング群とコントロール群を比較すると術後1、3日目でコントロール群のD.S.が有意に減少していた。<BR>【考察】本研究では、アイシング群で術前に対して術後1、3日目のD.S.に有意差が認められなかったことから、術後3日目までには痛覚過敏の兆候が見られず疼痛が抑制されていると予想された。アイシング群の1日目においてはアイシングにより疼痛が抑制されたと考えられる。3日目のアイシング群でD.S.が1日目よりも減少しているが、コントロール群の3日目よりも減少していないことから、アイシング群では痛覚過敏発症が遅延しているのではないかと考えられた。この痛覚過敏の発症に関しては術後の坐骨神経に5.0chromic gutが残留していることや、アイシングの効果が低下してきているためであると考える。<BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0597-A0597, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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