「趣味の遺伝」論 A Study on Natsume Soseki's "Shumi no Iden"

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著者

抄録

「滑稽の裏には真面目がくつ付いて居る。大笑の奥には熱涙が潜んで居る。雑談の底には啾々たる鬼哭が聞える。」(二)という「諷語」を作品に活かすことで、「趣味の遺伝」という「男女相愛」の「玄境」を現代に問いかける。作品の背景は、明治三十七年(一九〇四)から明治三十八年(一九〇五)の日露戦争であるが、読者と物語の時間を共有するということ以外で、漱石がこの戦争とかかわることはない。というのも、漱石には「生理的な『厭戦思想』はあっても、政治的な『反戦思想』はない。」からである。作品の主題は、あくまでも「天下に浩さんのことを思つて居るものは此御母さんと此御嬢さん許りであらう。」(三)という「余」が、「此両人の睦まじき様」に「清き凉しき涙を流す。」(三)ということ以外ないのである。ここに、「父母未生以前に受けた記憶と情緒が、長い時間を隔て、脳中に再現する。」(三)という漱石文芸の世界が開示する。

収録刊行物

  • 九州女子大学紀要 人文・社会科学編

    九州女子大学紀要 人文・社会科学編 36(1), 71-77, 1999

    九州女子大学・九州女子短期大学

各種コード

  • NII論文ID(NAID)
    110005999067
  • NII書誌ID(NCID)
    AN10143588
  • 本文言語コード
    JPN
  • 雑誌種別
    大学紀要
  • ISSN
    09162151
  • NDL 記事登録ID
    5302530
  • NDL 雑誌分類
    ZV1(一般学術誌--一般学術誌・大学紀要)
  • NDL 請求記号
    Z22-663
  • データ提供元
    NDL  NII-ELS 
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