東南アジア諸国のインフレ・ターゲティングに対する一考察

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タイトル別名
  • トウナン アジア ショコク ノ インフレ ターゲティング ニ タイスル イチコウサツ
  • How Successful Has Inflation Targeting Been in Southeast Asian Countries?

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抄録

アジア通貨危機により変動相場制へ移行した東南アジア諸国において, インドネシア, タイ, そしてフィリピンは新たな金融政策のフレームワークとしてインフレ・ターゲティングを採用した。しかしながら, これらの新興市場国において, 同政策採用が金融政策の透明性を高め, 理論的根拠であるインフレ期待に対する動学的非整合性を回避し, また実際に直面しているインフレ圧力を抑えることは可能であろうか。さらに, 新興市場国にとってとりわけ重要な生産を損なうことなく同政策の運営が行われているのだろうか。本稿ではインドネシア・タイ・フィリピンの3ヶ国を事例として, マクロ経済指標の変化および生産への影響についての実証分析を試みた。結果として, 各国は概ね金融政策変数の誘導には成功しており, インフレ値の低位誘導傾向も看取される。また, 生産に関しては, インドネシアおよびフィリピンで予測値を下回る結果が得られたが, 分散分解の結果によれば生産へのインフレ・ターゲティングの寄与率が決して大きなものでないことから, インフル・ターゲティングが生産を著しく損なうとは考えにくいであろうとの結論が導かれた。ただし, 為替レートの変動が生産に与える影響については決して小さくないことも確認された。

収録刊行物

  • 経済学雑誌

    経済学雑誌 107 (4), 90-106, 2007-03

    大阪市立大学経済学会

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