高齢者における足底感覚と足圧分布およびバランス能力の関連性

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抄録

【目的】<BR> 高齢者において足底感覚閾値の上昇やバランス能力の低下が生じることは周知であるが、実際に高齢者でそれらの関連性を調べた報告は少ない。また、高齢者では立位時に全足底が接地していない場合も多く、足底接地の状態もバランス能力に影響を与えていると予測される。 <BR> 本研究の目的は、足底感覚と足圧分布が高齢者の静的および動的バランスに与える影響を明らかにすることである。<BR>【対象と方法】<BR> 対象は、本研究に同意を得た神経学的疾患を有さない高齢者12名(83.6 ± 6.4 歳、男性5名、女性7名)とした。<BR> 足底感覚は、Semmes-Weinstein Monofilamentsの5本セット(0.0677 g ~ 477 g)を用いて触覚閾値を測定した。測定部位は第1趾から第5趾の底側、前足部の内側・中央・外側、中足部の内側・中央・外側、踵部の計12部位とした。足圧分布測定装置(Medicapteurs社製)を用いて開眼静止立位を20秒保持した際の平均足圧分布を測定し、最大荷重部位、接地していない部位、および足底接地面積(足長と足部横径の積で標準化)を求めた。静的バランス測定には重心動揺計(Anima社製)を使用し、開眼閉脚立位を20秒間保持した際の実効値面積と総軌跡長を求めた。動的バランス測定としてファンクショナルリーチ(身長で標準化)を測定した。分析は以下の項目について行った。<BR> 1) 足圧分布の特徴、2) 足圧分布と足底感覚閾値との関連性、3) 足底感覚閾値(全測定部位の中央値)、足底接地面積、バランス測定および年齢の各変数間の相関関係(Spearmanの順位相関係数)<BR>【結果】<BR> 1) 最大荷重部位は踵部7名、前足部中央3名、前足部内側1名、第1趾1名であった。接地していない部位は中足部内側が12名であり、その他の部位は足趾が11名、中足部外側が3名であった。<BR> 2) 最大荷重部の感覚閾値は、全測定部位の中央値よりも高値(7名)もしくは等値(5名)を示した。接地していない部位は、全測定部位の中央値よりも低値(8名)もしくは等値(4名)を示した。<BR> 3) 年齢と総軌跡長に有意な相関を認めた(r = 0.59)。しかし、年齢と足底感覚閾値および足底接地面積との間に相関は認められず、足底感覚閾値と総軌跡長(r = 0.63)、足底接地面積と総軌跡長(r = -0.68)に有意な相関を認めた。足底感覚閾値および足底接地面積はファンクショナルリーチとも有意な相関を認めた(r = -0.83、0.59)。<BR>【考察】<BR> 荷重の強い部位は感覚閾値が上昇し、荷重していない部位は閾値が低下する傾向にあり、足底感覚の検査により足圧分布を予測しうる可能性が示唆された。また、静的および動的バランス能力には足底感覚とともに足底接地面積も影響を与えており、臨床においてバランス能力を改善させるためには足底接地面積についても考慮する必要があると考える。<BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), A0706-A0706, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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