質的研究における分析と解釈(II) : 日記の書き手からみた社会的世界

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  • シツテキ ケンキュウ ニ オケル ブンセキ ト カイシャク 2 ニッキ ノ カキテ カラ ミタ シャカイテキ セカイ
  • Analysis and Interpretation in Qualitative Research (II) : the Social World from the Standpoint of Diary Writing

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Abstract

本稿の目的は,日記テクストをデータにして書き手からみた社会的世界を分析し,社会的世界に対する書き手の主観的態度を解釈することである。取り上げる日記は,大正期の地方都市金沢で象嵌職人が書き記したものである。分析方法として,まずA.シュッツの現象学的社会学を応用し,地域社会における社会的世界の構成を試みる。この段階の分析は,対象者の一次的意味構成を研究者が追構成することである。書き手の「いま,ここ」のパースペクティヴから地域社会に生起する出来事を記述し,いくつもの領域から成る社会的世界の構成を整理する。つぎに,G.H.ミードの理論を応用して,地域社会におけるエートス,とくに対面的な人間関係で重視されるエートスを検討する。書き手にとって「他者の態度取得」をする相手とは誰か,また地域社会の「一般化された他者」の態度とは何か,日記に記述された相互行為を分析することによって,地域社会に存続してきたエートスを読み取る。研究者は日記を分析,解釈する際に,日記テクストを現在の視点から再構成する。この段階の分析,解釈は研究者による二次的意味構成に相当する。その際,書き手のパースペクティヴを通して再構成される事実が,現在にとって客観的リアリティをもつと仮定する。書き手のパースペクティヴを超えたところに客観的な過去の事実(真の過去)の存在を想定しない。

日記

社会的世界

他者の態度取得

エートス

identifier:SO004200000911

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