数学的帰納法 : そのカント判断論との関連

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  • スウガクテキ キノウホウ ソノ カント ハンダンロン ト ノ カンレン

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抄録

カント時空論の研究を通じて明らかになってきたことがある。 それは「一」の問いとでも言うべきもので、時空の一と自我の一、すなわち、時間と空間が「一つ」であることと私が「一人」であることが関連しており、この関連からカントは多くの洞察を得ていることである。この論文は、この関連の性質を探る私の一連の試みの一つとして位置づけられる。今までの論文では、おもに統一としての「一」を考えた。ここでは「一」の自然数としての性質に焦点を当て、「純粋理性批判』でのカントの数論を分析する。カントの数観に「統一」「次々に」という考えを見て、この「列」としての数の考えが今の数学基礎論の数観と近いことを論ずる。その上で、『三段論法四格の誤った煩雑さ』に現れるカントの判断論に数論との関連を求めるのである。カントの判断論は、判断能力のもっとも基礎にあるものとして列生成の力を主張する。この判断が生成する列は、自然数の列とその基本的な性質を分かつものであることを確認した。カントは人が判断することと世界が人に現れることを一つと見るが、世界の現われは物の区分をともなっており、この区分は数によって表現されるのである。言いかえれば、カントの判断論は、世界の現われのもっとも基本的なところにある数を判断とともに生じるものと見ることを可能にするものである。「純粋理性批判」がその課題を「いかにして綜合的でアプリオリな判断は可能か」と、「判断」を基礎に置くのは、判断がこのような意味でも人と世界の関わりの要にあるからである。「一」問題の探求は、統一としての一、自然数としての一、この二つの側面が関連する必要がある。この論文は、この数としての一を、ひとまずカントの体系の中に位置づけることができた。

判断

自然数

数列

帰納法

直観

identifier:BO008500003728

収録刊行物

  • 文学部論集

    文学部論集 85 25-38, 2001-03-01

    佛教大学文学部

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