歯冠計測値からみた東北地方中央部江戸時代人の成立

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後期旧石器時代から縄文時代にかけて日本列島に居住していた縄文人集団の中に,弥生時代以降に北アジアから渡来した人々が浸透していくことで日本人が形成されたという埴原の二重構造モデルが大筋において受け入れられて久しいが,この作業仮説を検証するための古人骨資料は十分ではなく,当時の人々の具体的な動きは不明な点が多い。本研究では岩手県南部の遺跡から出土した,男性71個体・女性67個体の近世人骨の歯冠計測値から算出された統計量や生物学的距離に基づき,時代内の差異と時代間の差異の2つの観点から東北地方中央部における江戸時代人の形質的特性と渡来系集団の浸透の様相を推量した。他地域の江戸時代集団との比較では,計測項目毎にみると関東地方集団の変異幅に重複する計測項目が多く,因子得点による計測項目相互の特性の比較では九州・関東集団と類似したプロポーションを示した。先行研究によれば東北地方の江戸時代人は他地域と比べて小さな歯を持つとされるが,本研究の対象となった東北地方集団では他地域集団との間に明瞭な差異は認められなかった。他時代集団との比較では男性と女性の双方とも現代人を上回る大きさであり,生物学的距離に基づいて他時代集団との親疎関係をみたところ,男女ともに渡来系に属する集団と近縁する分布域に布置され,江戸時代後期には渡来系の形質要素をもつ人々が当地域に十分浸透していた可能性が示唆された。

紀要類

学位論文

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