アイデンティティとネットワーク : ある沖縄人女性の生活史と文化実践から

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  • アイデンティティ ト ネットワーク アル オキナワジン ジョセイ ノ セイカツシ ト ブンカ ジッセン カラ

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抄録

本稿の目的は、ある沖縄出身女性のライフヒストリーと文化実践を通じて、本質主義的アイデンティティと多様な社会的ネットワークとの関係を考察することにある。社会学においてアイデンティティは、語り得ないもの、あらかじめ引き裂かれ砕け散ったもの、多様化し流動化したものとして捉えられている。さらに、統一された真性なる自己を語る本質主義的アイデンティティは、政治的な反動であるとして批判されることがある。それは抑圧的な社会関係や権威と結びついているとされるのである。これに対し本稿では、ある沖縄出身女性の語りと実践から、本質主義的アイデンティティと多様な社会関係が共存している例をあげ、自己の語りと社会関係とは相対的に自律的なものであること、本質主義と開かれた関係性とは必ずしも矛盾しないこと、むしろ本質主義的な民族文化の語りを中心にしたほうが様々な人々が集まりやすいことなどを述べる。最後に、必要以上に言語論的に転回してしまったアイデンティティの理論を批判し、アイデンティティへの実証的な「エコロジカル・アプローチ」を提案する。

収録刊行物

  • 人権問題研究

    人権問題研究 8 41-58, 2008-03

    大阪市立大学人権問題研究会

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