カトリック救癩史の一断面 : 岩下壮一における患者観の形成の視点から

書誌事項

タイトル別名
  • A Cross Section of the History of Catholic Leprosy Relief : Iwashita Soichi's Outlook on Patients
  • カトリック キュウライシ ノ イチ ダンメン イワシタ ソウイチ ニ オケル カンジャカン ノ ケイセイ ノ シテン カラ

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抄録

岩下壮一(一八八九-一九四〇)はカトリック思想家であり、一九三〇年からl九四〇年までの約一〇年間へ神山復生病院の第六代院長(邦人初)として救癩事業に従事した。本稿は、患者と国民国家との関係をおもに権力論でとらえた既往の近代日本救癩史研究の知見を踏まえつつも、その副次的な位置にある患者の日常生活における直接的で対他的な関係史の視座から、岩下に投影された患者像を探ろうとしたものである。岩下は、恩師ヒューゲルが示した対立概念の相関的把握という中世哲学がもつパースペクティヴの有用性を、全体主義が強まる一九三〇年代の現実社会の中で検証しようとしたのである。つまり、「癩」ゆえに喪失した患者の<主体>を再生させるべく、患者の主体形成の観点-すなわちへ自ら宗教的・倫理的に<内的権威>をつくること-から患者-国民国家の関係を根拠づける哲学を構築していったのである。それゆえ、岩下を再評価すれば、国家主義的な救癩政策に加担していたとする従来の評価は妥当ではないといえよう。

収録刊行物

  • 宗教研究

    宗教研究 82 (1), 119-142, 2008

    日本宗教学会

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