変形性股関節症患者の人工股関節全置換術前後における片脚立位と足部の関係について

DOI
  • 南塚 正光
    金沢医科大学病院リハビリテーションセンター
  • 神戸 晃男
    金沢医科大学病院リハビリテーションセンター
  • 石田 睦美
    金沢医科大学病院リハビリテーションセンター
  • 清井 順子
    金沢医科大学病院リハビリテーションセンター
  • 栗岩 和彦
    金沢医科大学病院リハビリテーションセンター
  • 橋本 亮二
    金沢医科大学病院リハビリテーションセンター
  • 山口 昌夫
    金沢医科大学運動機能病態学(リハビリ科)

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抄録

【目的】<BR> 片脚立位は簡便なバランス指標として理学療法の評価に用いられている。また、変形性股関節症 (以下OA) 患者においてはトレンデレンブルグ現象等の異常姿勢改善の理学療法として用いられている。<BR> 今回、我々はOA患者の人工股関節全置換術(以下THA)前後における片脚立位時の重心動揺と足部の感覚や筋力との関係について調査し、若干の知見を得たので報告する。<BR>【対象と方法】<BR> 被検者は研究内容を説明し同意を得た末期OA患者、女性10名で、THAを施行し、当院クリニカルパスを適用したものとした。手術前・退院前に重心動揺計(アニマ社製G-7100)を用い、片脚立位30秒間における総軌跡長と外周面積を測定した。また、足底の二点識別覚、足趾把持筋力、足部の内側アーチ高率も測定した。二点識別覚ではノギスを用い、二点として識別できる最小距離を、踵部、小指球部、母指球部、母指部で測定した。足趾把持筋力については、(株)アイテムの協力のもと先行研究に準じて測定器を作成し、膝関節90°足関節0°位の椅子座位にて2回測定した。内側アーチ高率では、片脚立位を内側よりデジタルカメラにて撮影し、Scion Imageで解析した。また、股関節外転筋力として、ハンドヘルドダイナモメーター(アニマ社製μTasMF-01)を用いて大腿骨顆部に抵抗を加え、股関節中間位で、外転の最大随意等尺性収縮を5秒間2回測定した。統計処理ではt検定とピアソンの相関係数を用い、有意水準を5%未満とした。<BR>【結果】<BR> 重心動揺では術前より術後の方が総軌跡長は長く、外周面積は大きくなったが有意差は認められなかった。二点識別覚は術前より術後の方が踵部、母指球部、母指部では最小距離は小さく、小指球部では大きい値となったが有意差は認められなかった。足趾把持筋力、内側アーチ高率は術前より術後の方が小さい値を示したが有意差は認められなかった。股関節外転筋力については術前より術後の方が有意に増大した(p<0.05)。また、二点識別覚と総軌跡長には相関はなく、足趾把持筋力と総軌跡長では術前で負の相関を認め、術後では相関は認められなかった。<BR>【考察】<BR> 健常人を対象に行った先行研究では足趾把持筋力と片脚立位保持時間や重心動揺との相関関係が認められている。今回、術前に足趾把持筋力と総軌跡長で負の相関を認め、術後において足趾把持筋力が低下し、片脚立位時の重心動揺が増大する傾向を示したことは、前述した結果と一致した。また、術後に股関節外転筋力が有意に増大したにもかかわらず重心動揺が増大する傾向を示したのは、股関節外転筋力は片脚立位の安定に寄与しているが、足趾把持筋力も片脚立位の安定に重要な因子の一つであるということが示唆された。<BR> 今後は、さらに症例を増やし、基礎データとして検討することや片脚立位、足趾把持筋力などの評価・治療効果判定に臨床応用していきたいと考える。<BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), C0098-C0098, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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